急増する梅毒感染者、過去最速ペース 把握しておきたいHIV感染との関係

Treponema_pallidum

 国立感染症研究所からの報告によると、3月26日までに国内の梅毒の感染者数は1,031人に達し、1999年以降で過去最速ペースとなっている。梅毒は性病の一種で、その疫学的な歴史は長い。世界に広まった梅毒がペニシリン治療の成功で患者数を激減させたのが1943年というから、その古さが理解できる。過去、何度かの流行があり、近年の日本の例では1987年が報告数2,928人でピークを迎えた。以後、年間500~900人で推移してきたが、2013年には1,200人を超え、以後増え続けている。梅毒は治療をすれば完治するが、性病が流行る背景にはその他の病気のリスクもつきまとう。性のリスクに関する現況をみていきたい。

◆増加の原因は不明
 厚生労働省が発表している「性感染症報告数」によると、淋菌感染症の感染者数は平成18年が12,468人で平成28年が8,298人、性器クラミジア感染症は平成18年が32,112人で平成28年が24,396人とそれぞれ10年間で減少しているのに対し、梅毒は18年の637人から28年には4,559人となり7倍を記録した。そして今年は、3月26日の時点ですでに1,031人に達しており、前年同期の796人を上回っている。通年で昨年の記録を更新してしまう可能性が高くなっているのだ。

 共同通信社が今年1月、関係機関への取材でまとめた記事によると、若年層の性行動の変化、風俗業の業態変化、蔓延国からの観光客の増加などが原因の可能性として挙げられるが、どれも根拠を示せるものではないとしている。事実として若い女性の感染者の増加や、繁華街がある東京都新宿区の2015年の届け出件数が都内の4割、全国の2割を占めたことを伝えている。厚生労働省からも原因は究明中としか公表されていない。

 鳴りを潜めていただけに、若い世代では関心の低さから初期症状を見逃し、感染を広げている可能性もありえるだろう。病期は1~4期に分けられ、1期は性器や口などにできものやただれが生じるが、これは3週間程度で消失してしまう。4期にまで進むと脳や心臓に大きなダメージを起こし死に至ることもある。性行為のみならずキスやオーラルセックスでも感染するため、リスクが低いと思った行動での感染が起きていることもありうる。

◆米国でも増加
 アメリカ疾病予防管理センターによると、アメリカ本国の梅毒感染者数は、2011年が46,040人、それが2015年は74,702人で1.6倍に拡大した。

 ロードアイランド州の保健省は、全米の縮図として指標を得やすい同州における2012年から2013年にかけての梅毒患者が79%増加したという発表とともとに、SNSによる出会いや性的遊戯の相手を探す行為が、その背景にある可能性を伝えている。

◆日本のHIV患者の現状
 海外のメディアでは、性病・性感染症(STD)とHIV/AIDSの罹患率やそのリスクが一緒に報じられることが多い。日本ではそれぞれ別に扱われているように見受けられるが、HIV/AIDSも異性間での性交渉による感染者が増えている現状では、その2次感染、3次感染は他の性病が広がるのと同じ状況でリスクが高まると見るべきだろう。日本では研究機関で双方の関連性が研究されているようだが、一般に広く警鐘を鳴らしているようには見えない。一方、アメリカ疾病予防管理センターは、梅毒などのSTDに感染している人は多くの場合同時にHIVに感染している、もしくは将来感染する可能性が高いと述べ、性病で傷ついた皮膚がHIV感染リスクを高めるとも注意を呼び掛けている。梅毒患者への差別とならないような配慮は重要だが、リスクはリスクとして認識できるような一般への伝え方を日本でも考える必要があるのではないだろうか。

 その日本のHIV/AIDSの感染者数だが、厚生労働科学研究エイズ対策研究事業で公表している「AIDS/STI データベース」を見ると、他の先進国では減少している国もある一方で、日本はHIV/AIDS患者数が増加してきたようすがうかがえる。梅毒が拡大する何らかの環境があるとすれば、2017年以降、HIV/AIDSの感染者数に何かしらの影響があるかもしれない。

Text by 沢 葦夫