“日本人は冒険的なワインが好き” ブーム到来で期待される日本市場 ユニークな国産も人気?

 輸入ワインが自由化された1970年代以降、日本では何度もワインブームが起こっている。バブル期にはボジョレー・ヌーボー人気が過熱し、90年代後半には健康によいポリフェノールが豊富と言われ、赤ワインブームが起きた。そして今まさに、新たなワインブームが到来している。国内消費は赤から白へ。そして国産ぶどうで作られたジャパニーズ・ワインが注目を浴びている。

◆成長のポテンシャル大。日本市場は魅力的
 市場調査会社、ユーロモニターによれば、2014年のブドウを原料としたワイン(スパークリングも含む)の販売額は、国内で3240億円となり、2009年と比較し35%増となっている。キリンの調査では、ここ10年、国産ワインの販売も増加を続け、輸入ワインの消費は、2013年には過去最高となっている。

 飲食関連の情報を提供するサイト『Beverage Daily』によれば、日本は世界第16位の規模を持つワイン市場であり、一人当たりの消費量はすでに成熟した欧米市場に比べれば少ないが、注目を浴びる中国よりもかなり多いと述べている。コンサルタント会社、ワイン・インテリジェンスは、日本を世界で3番目に魅力的なワイン市場として今年の報告書に位置づけているという。

◆消費者の選択も変化
 ワイン・インテリジェンスの報告書によれば、日本のワイン消費者はより冒険的な味を好み、ワインへの興味も増大しているらしい。新しく変わったワインを試すのが楽しいと答えた人は、2014年の21%から27%に上昇。ワインに強い興味があると答えた人は、2014年の40%から51%に増えている。過去6ヶ月間に国産ワインを飲んだと答えたのは52%で、1番人気は国産だが、44%がチリ産を飲んだと回答し、フランス産を上回った(Beverage Daily)。

 かつて人気だったフルボディの赤ワインに代わり、軽くて料理に合わせやすい白ワインに人気がシフトしていることも報告書で指摘されている。東京でワインを輸入するジェロボームのカール・ロビンソン氏は、やっと日本人は、高級レストランで西洋料理とともにではなく、家でワインを飲むようになったと述べ、若者、女性の間で人気が高まっているようだと話す(フィナンシャル・タイムズ紙、以下FT)。家飲みをする新しい層が、和食に合う白を好んで飲んでいるということもあるのかもしれない。

 価格も人気に影響しており、フランス産はそのステータスから価格も高く、お堅いと日本の消費者には見られているという。これは、カリフォルニア産も同じで、自由貿易協定で価格が手ごろとなったチリ産と比べると、値段に見合わない味ということらしい(Beverage Daily)。

◆国産ワインにも変化が
 ワインブームは、飲むだけではなく、作る方にも訪れている。ブルームバーグによると、サントリーなどの国内メーカーが、100%国産ブドウを使った純国産ワインの製造に力を入れている。

 ワイン評論家のジャンシス・ロビンソン氏は、日本産ワインはいまだに輸入ワインとのブレンドが多いものの、国産ブドウを使った軽く切れのあるナチュラルなワインも生産され、新しい波が来ていると話す。日本のブドウと言えばまず浮かぶのが山梨だが、ここで作られる甲州ワインのドライな白は外国人にも人気があり、不思議なことに米と酒を思い出させる「禅」のようなワインだと評している。また注目の生産地は北海道と山形で、特に北海道には素晴らしいカルト・ワイン(品質が高く生産量が少ない希少ワイン)のピノ・ノワール(赤ワインに適した葡萄の品種)があると称賛している(FT)。

 ワイナリーを町おこしに使う試みも宮城県で行われている。三菱商事復興財団の援助で、仙台近郊に作られた秋保ワイナリーは、ワイン作りによって東日本大震災で被災した土地と経済の復興を目指している。同ワイナリーの毛利親房氏は、ワイナリーを作ることで「ワインブームの今、人々がやってきて地元のレストランや産業を支えてくれる」と話し、波及効果を期待している(ブルームバーグ)。

 かなり裾野の広がった感のある今回のワインブーム。欧米のような、身近にワインのある文化が、日本に根付く日も近いかもしれない。

Text by 山川 真智子