「人身売買」は大げさなのか? AV出演強要、JKビジネス…危険に晒されている少女たち

「あなたは美しい。モデルになりませんか?」甘い言葉で巧みに若い女性を騙し、アダルトビデオに強制的に出演させるという事件が日本国内で多発している。

 この事件について、日本を拠点とする国際人権NGOのヒューマンライツ・ナウは調査報告書「日本:強要されるアダルトビデオ撮影 ポルノ・アダルトビデオ産業が生み出す女性・少女に対する人権侵害」を発表、同産業をとりまく法整備の必要性を訴えている。

 なかには、被害者を密室に閉じこめ無理やり契約書にサインさせたり、撮影直前まで内容を明かさず“実質的に強姦事件を撮影したのと同じ”と言える極めて悪質な事例もあり、日本国内のみならず海外メディアからも注目を集めた。

◆日本では、ポルノが巨大産業である
 英デイリー・メール紙は、「日本のポルノ産業は年間5,000億円の規模で、年間約20,000本を撮影している」「日本ではポルノグラフィが広く一般に普及しており、一部の有名ポルノ女優はメインストリームのバラエティ番組や週刊誌のコメンテーターとして出演することもある」と紹介。

 英インデペンデント紙も、「グローバル全体のポルノ産業の規模が970億ドル。その内、日本が占める割合は約44億ドル」として、日本においてポルノ産業がいかに巨大であるかを具体的なデータを挙げて強調した。

◆“人身売買”なんて、大げさなのだろうか?
 この事件とは別に、今日本では“JKビジネス”も問題視されている。「JK散歩」「JKリフレ」などが代表的で、女子高生と散歩したりリフレクソロジーを受けるという、性風俗まではいかないグレーゾーンのサービスだ。

 米CNNは2015年12月28日付のJKビジネスに関する記事の中で、米国務省の人身売買報告書から「組織的かつ悪質な売春ネットワークが日本の少女を狙っている」「援助交際が日本の子供による売春を助長している」という文を引用して紹介。しかし、多くの日本人にとっては、人身売買と言われてもどこか遠い国のことのように思えて、ピンとこないのではないだろうか。

 日本の性ビジネスには、「援助交際」「JK散歩」など、ふんわりとした言葉が多く用いられている。そのためか、日本社会の反応は、海外報道よりもどこか深刻さに欠けているように見える。

◆恥の文化、被害者を責める日本社会
 また、CNNの同記事では、このような被害が拡大した背景として「日本社会には恥の文化が根強く残っており、また被害者を責める傾向があるため、多くの少女達が声を上げられずにいる」という人身取引被害者サポートセンターの藤原志帆子代表のコメントも掲載した。

 このことは、先日発表された「働く女性の3割がセクハラ被害」という調査結果にも通じるものがある。

 女子中高生をはじめとする若い女性は、日本では若者文化の担い手や流行の発信源として尊重されている面もある。しかし、いかに文化への影響力が大きいといっても、社会的立場が弱く判断力が未熟な“未成年者”であることには変わりない。

 ふんわりとした言葉に惑わされて被害に遭ってしまった若者のことを自己責任論だけで片付けずに、法整備を整え社会全体で守っていくことが大切だ。

Text by 月野恭子