東京は「世界一安全」であり「世界一危険」でもある? 英紙の論じる安全な都市とは

 英ガーディアン紙の記事に「どこが世界で一番安全な都市?」という記事が掲載された。その中で、東京は「世界で一番安全な都市」でもあり、「世界で一番リスクの高い都市」でもあるとされている。それは一体どういう意味なのだろうか。また「安全な都市」とはどういった状態を指すのだろうか。

◆世界で一番安全で危険な都市・東京
 同記事では、さまざまな統計を用いて議論されている。その一つとして、エコノミスト誌の調査部門である「エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)」が発表した調査結果では、「世界で一番安全な都市」の第1位に東京が選ばれている。

 この調査は、犯罪などの通常の安全性のほかに、ネット上の安全性、道路整備や自然災害への対策などインフラ面での安全性、衛生・健康面での安全性などの要素も考慮に入れられている。

 東京は、すべての面で高いスコアを獲得。特に、犯罪率の低さや、ディーゼル車規制による大気汚染への配慮、歩行者専用道路の整備などが評価されたようだ。

 しかし同時に、ガーディアン紙は「東京は世界で一番リスクの高い都市でもある」と述べる。世界有数の保険会社スイス・リーの調査では、東京は地震や津波、洪水などの自然災害のリスクが高いとされているためだ。

◆別の視点からの「都市の安全性」とは
 さらに同記事は、さまざまな角度からの「都市の安全性」について議論する。例えば、サイクリストにとっての安全性や、電車などの交通機関を利用する女性にとっての安全性などだ。

 サイクリストにとっては、残念ながら、東京は一番安全な都市とは言えないようだ。ビジネスニュース専門サイトのビジネス・インサイダーは、自転車に関するコンサルティング会社コペンハーゲナイズが発表したランキングを紹介。東京は2011年には4位だったものの、2013年には10位に後退。一方で名古屋が2011年には20位圏外だったのが2013年にはミュンヘンやモントリオールと並ぶ11位となった。

 東京は、運転の教習が厳しく、自動車の事故が少ない点が評価されているが、自転車専用レーンの整備がまだ進んでおらず、歩行者と自転車が入り乱れる状況があることがマイナス評価されている。一方、名古屋は日本全国に先駆けて自転車専用レーンの整備を推進していることが評価された。

 交通機関を利用する女性にとって、東京は世界でもかなり安全なようだが、世界一とは言えないようだ。トムソン・ロイター財団が、世界の主要国の首都15都市とニューヨークの交通機関における、女性にとっての安全性を比較している。

 それによれば、東京は夜間の安全性や言葉による嫌がらせの危険性において、16都市中最も安全で、都市全体としての安全性も高いスコアを得ているのだが、痴漢行為などの身体的な嫌がらせや、そういった場合に周囲の人の助けを期待できるのかという点で、低いスコアが示された。

◆社会状況や環境によって異なる安全性の中身
 ガーディアン紙は、都市の安全性というものは、テロの脅威やサイバー攻撃による脅威など、社会状況が変化するとともに内容も変わってくるし、また各個人の立場や環境によっても違ってくるとしている。

 そしてまとめとして、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンのリサーチ・ディレクターであるミシェル・アキュート博士の言葉を引用して、自転車利用者にも歩行者にも安全な環境を整備するといったような、持続可能性を高めることや社会格差の是正が必要、と指摘している。

 また、自然災害のリスクに対しては、リスクの試算、リスクを緩和させる施策、そして十分な資金を用意しておくことで、災害に対する受容性・耐久性を高めることが重要だ、とスイス・リーは調査結果で述べている。

Text by NewSphere 編集部