「自己責任」なら見捨ててよし? 海外メディア、イスラム国人質事件で日本国民の姿勢を問う

TIME誌記事

 過激派組織「イスラム国」は、拘束した2人の日本人の命と引き換えに、身代金を要求するビデオ映像を公開。支払い期限が過ぎた24日に、新たなビデオが公開され、人質の1人である湯川遥菜氏が殺害されたと発表された。

 残る1人の人質、後藤健二氏の解放には、ヨルダンで死刑囚となったイスラム国の仲間の釈放が条件とされている。先の見えないこの事件への日本国民の反応を、海外メディアが報じている。

◆日本では尊敬と謙虚さが必要
 CNNは、後藤氏の母、石堂順子さんが、記者会見で息子の助けを求めるよりも先に、まず政府と国民へお詫びをしたことに注目。テンプル大学ジャパンキャンパス、アジア研究学科のジェフリー・キングストン教授は、日本社会では「他人に不便をかけると、その人を敬い、許しを請うことが大切」と指摘。

 CNNは、もし会見で母親が、後藤氏が湯川氏を助けるためにイスラム国を目指したこと、また戦闘地域からの報道で高く評価されていたことを語っていれば、彼女は息子の正しさを押し売りする身勝手な個人として捉えられただろうと述べ、まず謝罪をし、助けを乞うたのだと説明している。

◆人質はトラブルメーカーか?
 タイム誌とCNNはともに、2004年に3人の日本人がイラクの武装組織に誘拐され、解放と引き換えに、自衛隊の平和維持活動からの撤退を要求された事件を紹介。政府は要求を拒否したが、人質は無傷で解放された。CNNは、帰国した人質は、「トラブルメーカー」として疎んじられ、「自己責任」という言葉が日本人の魂に刻まれたと述べる。

 ほとんどの日本人にとっては、中東の紛争地帯は遠く危ないところで、安全と落ち着きが隅々まで行き届いた日本とは正反対だというCNNは、多くの日本人が、危険地帯に行くことを理解できず、自分の意志で渡航した人には同情しかねると指摘する。

 タイム誌も、日本のソーシャルメディアでは、「前から危険は分かっていたはず」、「政府の要請で二人がシリアに行ったわけではない」など、批判のコメントが多く見られると述べる。

 このような日本の世論に対し、キングストン教授は、自国民が捕まっている光景は、イラクやシリアの状況をくっきりと浮かび上がらせたことは間違いないと指摘(CNN)。「世界のステージで日本が関心と注目を惹きつけることに、(日本の)人々は怖気づくかもしれない」と述べ、今や日本人にとり、イスラム過激主義が他人事ではないことを示唆した(タイム誌)。

◆日本のネット民が貢献?
 今回の人質事件に対する日本のネットの反応として、米ニュースサイト『The Daily Dot』は、日本のネット民がテロリストが公開した画像をフォトショップで加工し、イスラム国を嘲笑う「ISISクソコラグランプリ」について取り上げている。不謹慎との国内報道とは対照的に同サイトは「ISISクソコラグランプリ」を賞賛。今後のテロを防ぐ一助となるかもしれないとまで述べる。

 イスラム国は、正義と残忍というプロパガンダ・メッセージを、ソーシャルメディアを通じ、過激主義に釣られやすい若者に送り、戦闘員として取り込む。しかし、日本のネット民は、このプロパガンダをまぬけなアニメキャラと合わせ、バカらしさを演出。その結果イスラム国のメッセージの重力をひっくり返すのだという。

 一度コラ画像を見れば、もうオリジナルを真剣に受け取ることはできないという『The Daily Dot』は、プロパガンダの情熱や真剣さを朽ちさせるというこの手法が、小さな勝利を導くかもしれないと期待。人質を救出することはできなくても、勧誘阻止の効果はあると述べている。

Text by NewSphere 編集部