理研、STAP細胞再現できず 組織改革案発表も、“手ぬるい”と識者批判

 理化学研究所は27日、実験結果が捏造だと疑われているSTAP細胞の実験について、現在のところ再現が難しいとの中間報告を行った。

 STAP細胞と名付けられた万能細胞の発見は、今年1月ネイチャー誌に掲載され、移植・再生細胞の研究の流れを大きく変えると歓迎された。研究のユニットリーダーであった小保方晴子氏は、万能細胞を生成することに成功した先駆者として大きな話題となった。しかし、論文は掲載直後から、研究データが捏造ではないかとの疑いを指摘された。7月、小保方氏は、論文の撤回に同意。今月初め、共同執筆者の笹井芳樹氏が自殺した。

【「当たりくじを予想するようなものだ」】
 検証実験は相沢慎一特別顧問の管理のもと、丹羽仁史プロジェクトリーダーらが4月から始めている(日経新聞)。研究者らは、論文にあるように通常の細胞から万能細胞を作り出す実験の再現を行った。理研は、マウスの胚にできた細胞を移植し、それが本当に万能細胞として機能するか試す計画だった。しかし、実験は、最初の段階から非常に難しく、そもそもそのような細胞を作ることすらできなかった(AFP)。

 丹羽氏は27日、彼のチームがマウスの脾臓細胞を使い22回実験を行なったが、今のところ万能細胞のようなものはできていないと報告した。理研は、異なる種類のマウスと方法で実験を続け、2015年の3月には最終報告を行うとしている。

 相沢氏によると、小保方氏はまだ気持ちの整理がついていないため、全ての実験に参加しているわけではないという(ウォールストリート・ジャーナル紙)。

 同氏は研究の成否について、「研究者に宝くじの当たりを予想しろと言っているようなものだ」と見通しを明らかにしなかった(ABC)。

【施設の重要性を強調する幹部】
 理研は27日、検証実験の中間報告と同時に、小保方氏が所属する発生・再生科学総合研究センター(CDB)の改革を発表した。センターの名前を改め、約400人いる職員を半分に削減するという。また、新しいトップには海外の研究者も置くと説明している。ウォールストリート・ジャーナル紙は、この立て直しについて、日本の科学研究の評判が、いかに痛手を受けたかを示している、と報じている。

 理研の野依良治理事長は、「経営責任者のひとりとして、間違いを防ぐための危機管理ができていなかったことを深く反省している」と述べ、「誠実な研究を促進する」ための組織の再編をすすめると誓った。しかしながら、人員整理で誰が職を失うのかなど、詳細は不明のようだ。

 理研は、小保方氏については、懲戒処分を考えているが、施設に残ることを認めているという。同氏は、研究に間違いがあったことは認めているが、基本的な部分は正しいと主張している。

 また野依氏は、施設の重要性を訴えた。海外の科学者、研究団体から、理研の研究を支持するという170通を超える手紙を受け取っていると述べた。「このことからわかるのは、生物学の発展に施設が中心的な役割を果たしているということだ」(ウォールストリート・ジャーナル紙)

【問題の本質を理解していない】
 理研は、STAP細胞スキャンダルの原因を、組織の体質というよりも、小保方氏個人の間違いだとの主張を繰り返している。外部有識者でつくる改革委員会は6月の報告で、CDBは全体的に解体したほうが良いと提言している。また、だらしのないデータ管理、同僚同士による未熟な審査体制などを含む、基本的な組織管理の欠陥を示している(ウォールストリート・ジャーナル紙)。

 同紙では、東京大学のロバート・ゲラー教授(地球物理)が、理研の組織改革は中途半端だと批判している。現在の管理状況について説明責任を追求していない。不正に気づき、責任者を替えるまでに余りにも時間がかかり過ぎだという。「あまりに遅く、ほとんど改善されていない」

 愛知淑徳大学の山崎茂明教授(研究倫理)も、理研の対応について、何が間違っていたのか本質を説明していない、と指摘している。「間違いは起きるものだ。研究の中で不正の可能性は常にある。しかし、もし理研がなぜそれが起きたのかを説明できなければ、職員を半分にしようと、関係者の全てを解雇しようと、何の意味もない」(ウォールストリート・ジャーナル紙)また、同氏は、今回のスキャンダルによって世界規模での研究が失速することはないだろうとしている。

Text by NewSphere 編集部