“オバマ大統領の広島・長崎訪問に期待”のケネディ大使、広島原爆の日・平和祈念式典に参列

 広島市中区の平和記念公園で6日、平和祈念式典が開かれた。原爆投下から69年となる。広島では14万人、長崎では7万人が死亡したと言われる。この1年間に新たに死亡が確認された原爆死没者は5507人で、計29万2325人となった。

 集団的自衛権の行使容認など、日本の安保政策が変化を迫られる中行われた式典で、日本は唯一の被爆国として核廃絶、世界の恒久的平和に貢献していく決意を新たにした。海外メディアはこの点について注目し報じている。

【憲法改正の議論が続く中で迎えた「原爆の日」】
 広島の松井一實市長は、平和宣言の中で、核兵器という「絶対悪」が、子どもたちから温かい家族の愛情や未来の夢を奪った、と述べた。「憎しみの連鎖を生み出す武力ではなく、国籍や人種、宗教などの違いを超え、人と人との繋がりを大切に、未来志向の対話ができる世界を築かなければなりません」と、今後の決意を新たにした。

 市長は、集団的自衛権の行使容認には触れなかった。一方、「日本国憲法の崇高な平和主義のもとで69年間戦争をしなかった事実」を、重く受け止めるべきと釘を刺した、とウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。式典後には被爆者代表が、安倍首相に集団的自衛権の行使容認を撤回するよう求めた。首相は、日本国民の平和と命と暮らしを守ることが目的で、戦争に参加できるようにするものではないと答えたという。

 式典のあいさつで安倍首相は、「人類史上唯一の戦争被爆国として、(略)確実に、『核兵器のない世界』を実現していく責務があります」と述べ、世界の先頭に立って非核化に貢献していくことが日本の義務だとした。非核三原則を堅持し、核兵器廃絶、世界恒久平和に尽力することを誓った、とウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。

【ケネディ大使の参列】
 午前8時に始まった式典には、生存者、遺族、首相を始めとする政府高官、また70ヶ国代表など4万5000人が参列した。就任後初の参列となるケネディ駐日米大使は、安倍首相を始めとする政府高官とともに席に着いた。米大使としての参列は2人目となる。ケネディ大使は長崎での式典にも参列する予定だという。

 大使は1978年、叔父のエドワード・ケネディ上院議員(当時)とともに最初に広島を訪れた。広島への訪問はそれ以来のことだ。スピーチや献花はなかったものの、大使館を通じて、「過去を思い、平和な世界を築くことへの決意を新たにする日」であると述べた(ブルームバーグ)。また同メディアによると、ケネディ大使は、オバマ大統領の広島・長崎訪問への期待感を語ったこともあった。

【「エノラ・ゲイ」最後の生存者が逝去】
 ブルームバーグは、原爆を投下した米軍のB-29爆撃機「エノラ・ゲイ」の航空士で、最後の生存者だったヴァン・カーク氏が、式典1週間前に93歳で死去したことを取り上げている。

 カーク氏は生前、原爆投下は、戦争を迅速に終結させるために必要な任務だったと擁護していた (ブルームバーグ)。一方、「第二次大戦でのすべての経験は、戦争はなにも解決しないことを教えてくれる。そして核兵器もなんの解決にもならない」と語り、戦争への不信感を示していた。

※本文中「被曝者」は「被爆者」の誤記でした。お詫びして訂正いたします。(8/7)

Text by NewSphere 編集部