“日本の女性差別は改善している” 『アナ雪』ヒットとセクハラ野次から米メディア分析

 『アナと雪の女王』の快進撃が止まらない。観客動員数は16週連続でトップ、興行収入は現在、『千と千尋の神隠し』『タイタニック』に続く歴代3位につけており、今なお上映中であることから、2位を抜く可能性もある。

 そんな空前の大ヒットとなった背景を、海外メディアが「日本におけるフェミニズムの変化」という視点から分析している。

【女性をターゲットにして大当たり】
 アメリカ、イギリスにとって『アナと雪の女王』は、半年以上前の上映作品だ。しかし3月に封切りされた日本では、今なお観客動員ランキング1位を保っている、と英ヤフーは伝えている。

 同作は世界でも大ヒットとなったが、日本では少し事情が異なる部分がある。ニュースサイト『クォーツ』によると、広告展開のマーケティングにおいて海外ではファミリー層をターゲットにしたが、日本では「女性」を狙ったのだという。

 そしてそれは見事に当たった。女性をターゲットにした理由についてウォルトディズニージャパンの井原多美氏は「消費購買力が高く、流行を創り出す力が最も強いから」とジャパン・タイムズに語っている。

【現実とのギャップ】
 これは実に興味深い現象だと『クォーツ』は指摘する。ヒロインのエルサは、誰かの庇護に頼ることも、求められる役割を演じることも捨て、本当の自分を解放するという強いキャラクターだ。プリンスとのロマンスに重きを置いた従来のディズニープリンセス像とは明らかに異なる。

 逆に日本は、結局のところ女性が強い社会ではない。世界で最も高い教育を受けながら賃金は男性に比べ30%低く、多くの女性は育児と仕事の両立が出来ず退職を余儀なくされるような国だ。そんな中、「自分を解放しよう」と歌った主題歌の「Let It Go」が女性への応援歌として日本人の心に響いたのではないか、とニッセイ基礎研究所の土堤内昭雄氏は分析している。

 安倍首相が女性の社会進出を促すブログ『SHINE!』を立ち上げたばかりにもかかわらず、都議会では女性都議に対し「自分が早く結婚しろ」「産めないのか」との野次が自民党内から飛んだ。とても『アナ雪』現象の時代とは思えない。自民党はこの映画のヒットに学ぶべきでは、と同メディアは説いている。

【”画期的な変化”と米メディアの見解】
 一方ブルームバーグは、今回の都議会での事件も「今までとは違う、日本がようやく変わり始めた兆し」と見ているようだ。

 政治家による失言は、これまでにも見慣れた光景だ。2000年初頭までなら既に終わった話だっただろうが、今回の件はそれだけで済まなかったと同メディアは伝える。『Change.org』には発言者の解明と謝罪を求める署名が約10万件集まり、数日後、鈴木章浩都議が名乗り出て謝罪するに至った。その後さらに、鈴木都議の事務所に卵を投げつける人物(しかも男性)まで現れた。

 この顛末は、日本が新しい方向へ進んでいることの象徴、と同メディアは指摘する。これまで女性が「かわいらしくて、家事ができること」に価値が置かれていたのが、社会において完全に平等な存在として変わり始めている兆しだというのだ。

 もちろん、まだまだ保守的な考えも根強く残っており、特に年配の保守的な男性は女性を「劣る存在」と見る向きもある。しかし「経済成長」という不可欠な事情がある以上、この傾向は進むだろう、と同メディアは述べている。

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Text by NewSphere 編集部