汚染水問題に、米企業の協力を…ケネディ大使、福島第一原発訪問のメッセージ

 14日、国と東京電力は、福島第一原発での汚染水削減対策として、建屋に流れ込む前にくみ上げた地下水を海に放出する「地下水バイパス」を、来週中にも実施すると発表した。

 建屋山側に掘った複数の井戸からくみあげた地下水を、第三者機関が調査したところ、セシウム、トリチウムなどの放射性物質の濃度が目標値を下回ったため、漁業関係者に説明したうえで、海洋放出を開始するという。これにより、1日あたり400トン流入する地下水の量が、最大で100トン程度減る見通しだ。

 この発表と日を同じくして、アメリカのケネディ駐日大使が、息子のジャック・シュロスバーグ氏を伴い初めて福島第一原発を訪問。施設を見学した後、記者団にコメントを発表した。

【大使はヘルメット、防護服姿で】
 APは、ケネディ大使が息子とともに福島第一原発を訪れ、東京電力職員のガイドによる3時間のツアーに参加したと報じた。大使は黄色のヘルメットに苗字が大きく書きいれられた白の防護服、マスク姿で登場したという。

 スターズ&ストライプス紙によれば、関係者を含む大使のグループは、東京電力の広瀬社長と面会後、燃料棒取り出し作業が続く4号機を訪問し、職員から作業の説明を受けた。大使の見学中は、実際の取り出し作業は停止されたということだ。

 一行は1号機、2号機の制御室も訪問。地震が起きた日に、暗やみの中で11人の職員が懸命に原子炉を制御しようとした話が紹介されたという。

【作業員に感謝の気持ちも】
 APによれば、見学終了後、大使は「ただ読んだだけでは、事故処理の複雑さを想像し、理解することはとても難しい。今回はとても有益な訪問となった」と感想を述べた。また、現場で働く作業員と、東電職員への感謝の気持ちも表したとのことだ。

 シュロスバーグ氏は「私の世代の人々が、福島を忘れず、今もそこには解決すべき問題があり、我々がそのために助けになることができるということを理解してほしい」と述べ、作業員たちの努力に気持ちを奮い立たされたと語った。

【声明の裏には?】
 大使はまた、今回の訪問を終えて、“米国政府は、日本政府と東京電力を支援するため、短期的には、汚染水問題の解決に向けて、経験と能力を提供する”という声明も発表している。

アメリカを含めた海外企業は、事故処理と廃炉作業への参入を希望しているが、ほとんどの事業は日本企業が受注している、とAPは指摘している。

「経験と能力を提供する」という大使の言葉の裏には、アメリカ企業の参入を求めるメッセージがあるといえるかもしれない。

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Text by NewSphere 編集部