ハイテク日本はなぜファックスを使い続ける? 高齢者の執着が要因と海外紙分析

 多くのハイテク技術を生みだしてきた日本が、いまだにファックスという時代遅れのコミュニケーションツールを使っている。海外メディアはその理由を論じた。

【高齢者が好む時代遅れのツール】
 ロボットや新幹線、高速ブロードバンド・ネットワークなどのハイテク技術で知られる日本は、先進国のほとんどで時代遅れとなったファックスをいまだに愛用している、とニューヨーク・タイムズ紙は報じた。アメリカでは骨董品として、スミソニアン博物館の展示に加わるほどだが、日本の家庭は昨年だけで170万台のファックスを購入しているという。日本の内閣府によると、2011年には会社オフィスのほぼ100%、個人家庭の45%がファックスを所有していた。

 日本においてファックスは必要不可欠なビジネスツールだ。専門家は、官僚が承認の判子を押すという事務処理を生みだすファックスを、行政が好んでいると指摘する。企業は受注や出荷の記録を残すため、また銀行は利用者が個人情報をネット上でやり取りするのを嫌うため、ファックスに頼っている。警察情報では、神戸に拠点を置く日本最大のヤクザ組織、山口組でさえも組員に除名の知らせを送るのにファックスを使っている。

 ニューヨーク・タイムズ紙は、高齢化社会が絶対確実な方法に執着することが、ファックスへの固執に象徴されると論じている。英ブログサイト『Global Lingo』でも、技術の進歩についていけない高齢者が昔ながらの方法を好むことが、高齢化社会における日本企業ファックス依存の要因ではないかと指摘した。

【ビジネスコミュニケーションにおける人間性】
 海外メディアは、ファックスがEメールに比べ人間味のあるコミュニケーションツールであると論じている。

 ニューヨーク・タイムズ紙は、弁当の仕出し会社である玉子屋を取り上げた。菅原勇一郎代表取締役社長は10年前、ファックスでの受注をネットに移行しようとした。売り上げは急落し、現在ではファックスと電話に頼る自社のスタイルを確立している。毎朝62000件の注文のうち半数がファックスで送られてくるという。菅原社長は、「日本の文化には、手書きのファックスを受け取ったときの温かい個人的な気持ちを求める何かがある」と語る。

 日本人は日本語をこよなく愛し、特にビジネスではそれが顕著であると『Global Lingo』は報じた。手書きの履歴書や事業計画書・企画書は、先進国の中でも日本だけだと指摘する。無機質で事務的なEメールの代わりに手書きのファックスを送ることは、ビジネス上のこだわりではないか。ビジネスの基本は人間関係であり、日本人はそれを理解した上で、可能な限りビジネスに人間性を残そうとしていると評価する。

【海外読者の反応】
 米大手ソーシャルニュースサイト『レディット』には、ファックスは時代遅れではないという意見が数多く寄せられた。

・北アメリカの保険会社ではファックスは健在。他企業でもファックスに頼っているところはたくさんある。
・銀行ITでもファックスは健在。Eメールと異なるのはファックスの文書は法的文書になるという点。

 その他、保険や会計、不動産分野でもファックスが活躍しているという。一方で、ファックスは資源の無駄であり、非効率的という否定的な見解もあった。

Text by NewSphere 編集部