海外が報じた日本(2013年5月)

1.サマリー
 5月、海外各紙は日本の経済・外交に注目した記事を主に掲載した。特に、安倍首相や橋下氏の歴史認識発言は、安倍政権の外交姿勢と合わせて注目が集まった。

2.日本の経済
 5月中旬までは、株高・円安が進み、アナリストの予想を上回るGDP成長も発表され、海外紙は「アベノミクス」におおむね好意的な報道姿勢だった。
 ただ、アベノミクスの効果が物価上昇だけで、賃金アップなど国民へプラスの結果をもたらさないのであれば、成功とはいえないという指摘もみられた。実際、賃金に関しては、政府から企業へ賃上げを要請していたものの、3月時点では前年同月比0.6%減だったという。
 効果が見え始めたばかりのアベノミクスだが、この勢いが持続するかどうかは安倍政権による成長戦略「第3の矢」の成果によるだろうと報じられていた。

 こうした状況下で、23日、東京株式相場は暴落した。背景には、円相場が1ドル101円台に上昇したこと、中国景況感の悪化、国内金利の上昇懸念などがある。
 ただ各紙は、日本経済の先行きへの不安ではなく、個人投資家など短期的トレーダーが主導した売り抜け気配の結果と見ている。また、株価が一定以上下がった場合に自動的に売却される「トレーリングストップ」注文が一斉に起動することで、暴落につながったとの観測も伝えられた。

 他には、日銀の金融政策決定会合にて、物価情勢の先行きについて、日銀が目指す「2年以内に2%の物価安定」の「実現は困難」との意見が出たことが報じられた。市場の専門家からは、「(混乱から)日本国債の買い控え」が生じているとの指摘がなされている。

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3.日本の外交
 日本の外交に関する報道では、アフリカとの関係強化が注目された。
 18日には、アフリカの資源大臣を招いた会合にて、「日アフリカ資源開発促進イニシアチブ」が発表された。アフリカで石油や鉱物資源などを開発する日本企業に対し、5年間で総額20億ドルを拠出するとともに、5年間で1000人以上の技術者を育成することや、鉱山周辺の環境保全などへの協力も行うとしたものだ。

 背景には中国のアフリカへの進出がある。ただ、急速な中国企業と従業員の大量進出による摩擦も増えており、多くのアフリカ諸国が、中国の手法は高圧的だと不満をもらし始めているとも報じられた。
 これを踏まえ、日本政府は、資源獲得だけではなく、日本企業特有の長期的アプローチの魅力を訴えた。マラウイのバンデ鉱山相は、誠実で、技術支援や長期的投資に意欲的という日本の評判を称賛していた。

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4.その他
 5月初旬には、安倍首相が歴史認識に関して、これまでの政権の公式謝罪を再確認する発言を行ったことに注目が集まった。海外の報道では、安倍首相は「タカ派」とみられているためだ。
 各紙は、安倍内閣の姿勢の急転換について、北朝鮮問題や中国の増長懸念などを前にして、同盟国間の亀裂を懸念する米国からの圧力を示唆した。

 また13日には、橋下大阪市長が、旧日本軍が従軍慰安婦を使用したことについて「慰安婦システムが(当時)必要だったことは誰でも判ります」と発言したと報じられた。
 これに対して橋下氏は27日、海外メディア向けに記者会見を開催。橋下氏は、慰安婦を正当化、または容認することを意図したことはないと釈明し、「日本の過ちを正当化するつもりはない」と繰り返し訴えた。
 ただし、歴史的事実として、「日本のみ」が「国家の意思として」、「女性を拉致、売買」したことはない、と改めて主張。他国軍でも同様の問題があったことも訴えた。
 このような橋下氏の釈明に対し、海外各紙は概ね、苦しい説明と考えている論調である。

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Text by NewSphere 編集部