海外が報じた日本(2013年2月)

1.サマリー
 2月、海外各紙は日本の経済政策に注目した記事を主に掲載した。デフレ脱却を目指す安倍首相の経済性政策「アベノミクス」への注目度は高く、日銀総裁の交代や、円安誘導との批判が起きていることなどは連日報道された。
 また外交については、日米首脳会談や中国艦のレーダー照射事件などが報じられた。

2.安倍内閣の経済政策
 2月5日、白川日銀総裁は3月19日の辞任を表明した。副総裁の任期に合わせた形だ。
 その後は日銀新総裁が誰になるかをめぐって記事が掲載されたが、最終的には28日に黒田東彦・アジア開発銀行総裁が日銀総裁として指名された(なおWSJ紙は、事前に報道されていた候補の中で黒田氏が最有力と予測していた)。副総裁に指名された岩田規久男氏とともに、これまでの日銀の政策を批判し大胆な金融緩和を掲げる人物だ。これが報道されてから、期待感からか、円安・株高の動きは続いている。

 一方、2012年10月-12月期の国内総生産(GDP)は、年率換算で前期比0.4%減。「アベノミクス」本格化前の数字ではあるが、3 四半期連続のマイナス成長という、日本が置かれる状況の厳しさが改めて浮き彫りになった形だ。

黒田新総裁、国会提示 海外紙が分析する日銀の今後とは?
日本のGDPはマイナス成長 アベノミクスの効果はいつあらわれる?

3.安倍内閣の外交・安全保障政策
【中国艦のレーダー照射事件】
 1月、中国の軍艦が、海上自衛隊の護衛艦やヘリコプターに対し、射撃管制用のレーダーを照射(ロックオン)していたことが発表された。小野寺防衛相は2月5日の緊急記者会見で、「極めて特異」な事態だとし、「一歩間違えれば大変危険な状態に発展していた」と述べた。一方中国政府は当初「事実を調査する」とのみ述べていたが、その後は「日本の捏造」と関与を否定した。

 尖閣諸島問題をめぐって加速した両国関係の緊張関係が、政権交代を機に一旦沈静化したかに思われた矢先に起きた事件。「ロックオン」は武力衝突につながりかねない危険な行為であり、中国側の狙いははっきりしない。海外紙は専門家の分析として、尖閣周辺の日本の監視行動をけん制するためなどの意見を掲載した。
 中国批判が目立った日本紙の記事に対し、海外紙は再発防止策を日中両国に求めるなどの記事が多かった。

中国艦船、自衛艦にレーダー照射 今後の両国関係を海外紙はどう分析したか?

【日米首脳会談】
 安倍首相は22日、オバマ米大統領との初の首脳会談を行った。海外各紙は、両国関係に焦点を当てつつ、TPP、防衛問題、基地問題など、日米の懸案事項を取り上げ、今回の首脳会談を振り返った。
 フィナンシャル・タイムズ紙は、安倍政権は民主党政権と異なり、「行動主義的で親米的」であり、アメリカに安堵感をもたらしたと報道した。安倍首相自身、「Japan is back」と述べ、自身の首相の座への「カムバック」と日本の「再生」を重ね合わせてアピールしている。
 TPP交渉については、進展は望めないとする大方の予想を裏切り、日本が交渉のテーブルにつくことを確約する結果になったと報道されている。
 対中関係については、安倍首相が日本側の「冷静な対処」の継続を伝え、「日米同盟の存在が地域の平和と安定にとって重 要」との認識で一致したという。
 日本の防衛力強化については、安倍氏から予算の増額や自衛隊の人員強化などの方針を伝えた上で、自衛隊の活動範囲を制限する国内法緩和の意向も示したという。防衛費の削減を進めたいオバマ政権にとっては歓迎すべき内容だと報じられている。

 しかし、アメリカが手放しで今回の成果を評価しているかといえば、そうともいえないようだ。TPPについては、日本が従来のやり方を抜本的に見直すことができるか疑問視する声が伝えられている。また現在は穏健な態度の安倍首相が、夏の選挙後に“タカ派”の顔に戻るのではという懸念もあるようだ。総じて、一定の評価をしつつ、今後に課題が持ち越されたことを強く示唆する報道となった。

日米首脳会談は、両国関係をどう強化したのか?

Text by NewSphere 編集部