海外が報じた日本 6つの主要ニュース(12月8日~12月14日)

1.サマリー
 12月2週目、日本の政治・経済についての主な記事は約40記事だった。先週と記事数は大きく変わらないが、北朝鮮のミサイル発射、中国機の領空侵犯などは大きく注目されている。また衆院選に関しても引き続き報道されているが、自民党が優勢で結果がほぼ見えているため、「維新の会」の政策矛盾や、ネットでの選挙活動がほぼできない現状、復興対策などの問題点を指摘する記事が中心だった。また、日本時間7日の地震・津波についてもすぐに取り上げられ、原発に影響がなかった点などが強調された。

2.海外紙が注目する日中関係
【経済面で復調の兆し】
 12日のフィナンシャル・タイムズ紙は、尖閣諸島をめぐる日中の対立が、両国ビジネスに与えた影響を特集した。
 まず、中国における日本製品ボイコットの損失は大きいと指摘。日本の対中輸出量は昨年に比べ12%減で、10月から赤字を記録している。また中国からの観光客も、10月は昨年より3分の1減少している。日中関係に詳しい専門家は「日本と中国は経済的にうまくやっていかなければならない。アジア諸国全体にも影響を及ぼす。」と警告している。
 ただ、改善の兆しが見えていることも報じられた。11月には、日中韓3カ国で自由貿易協定(FTA)に向けて正式な協議を開始する宣言があり、中国は反日運動を抑制しているとみられている。またデモの被害を受けたイオングループも、今後50のショッピングセンターを増やす予定であると発表している。日本車の売り上げも復調を見せ始め、「日本製品は安くて高品質なら中国人は買うだろう。今後影響は徐々に薄まっていく」という関係者のコメントを紹介した。
Asia: Sparring partners
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/0b7353e4-43a4-11e2-a48c-00144feabdc0.html

【尖閣問題で海上保安庁の活動に注目集まる】
 中国との領海問題で海上保安庁に注目が集まっている、と12日のウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じた。海上保安官が主役となった映画(「海猿))は大ヒットし、就職応募者も昨年の倍以上にのぼっているという。
 一方、注目の陰で抱える彼らの苦悩についても報じている。尖閣問題勃発から4ヶ月が過ぎても、依然緊張状態が続き、隊員は休日もなく勤務に追われ、疲労困憊している。島を巡回する中国漁船に加え、日本人活動家による無断上陸の取り締まりにも頭を悩ませているという。また海上保安庁の権限には限界があり、軍事力増強に賛成する政治家やアナリストからの批判的なコメントが多いことも伝えている。
Island Spat Tests Japan’s Coast Guard
http://online.wsj.com/article/SB10001424127887324339204578170733637585700.html

3.注目される日本の軍事/警察力
【フィリピンが日本の軍備増強に期待する理由は?】
 10日付フィナンシャル・タイムズ紙は、フィリピンのデルロサリオ外相へのインタビュー結果を掲載し、特に「我々は日本の再軍備を大いに歓迎するだろう。地域でのバランス要因を求めており、日本は重要な役割を果たすことができる」という発言に注目した。
背景には、南シナ海に対する領有権を主張し、挑発を続ける中国への警戒心があると分析。日本に植民地化された過去をもつフィリピンにとって、現在の中国への恐怖が、過去の日本の侵略の記憶を上回ったともいえる。
 この発言は、日本の自衛隊を「国防軍」に格上げする憲法改正を目指す、自民党の安倍晋三総裁を勢いづける可能性があるとも指摘している。一方、以前から日本の軍国主義復活を警戒してきた中国を刺激するリスクもある。その後、中国外交部(外務省)は、「今は一国が他国を抑止するような時代ではない」とコメントしている。
Philippines backs rearming of Japan
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/250430bc-41ba-11e2-a8c3-00144feabdc0.html

【日本のミサイル防衛システムの威力とは?】
 9日のウォール・ストリート・ジャーナル紙は、北朝鮮のミサイル発射をめぐり、日本のミサイル防衛システムに着目した。1998年の北朝鮮によるロケット発射以来、日本はミサイル防衛システムに約1兆円を投じ、米国に次いで洗練されたシステムを備える国となったと紹介。北朝鮮からの長距離ミサイルの位置を特定し、迎撃することも可能と関係者は自信を持っているが、実際に迎撃を行ったことはないため信ぴょう性に欠けると同紙は指摘した。また、日米共同開発による次世代迎撃ミサイルが2018年に製造開始することにもふれた。
Japan Shows Off Its Missile-Defense System
http://online.wsj.com/article/SB10001424127887323316804578165023312727616.html

4.日本経済、「景気後退」の原因とは
 政府が10日に発表した平成24年度7-9月期の国内総生産(GDP)や経済収支などのデータが全体的にマイナス成長を示していたため、海外各紙は揃って日本経済がリセッション(景気後退)入りしたと報じている。今年度第3四半期(7-9月)のGDP改定値は前四半期比0.9%減、年率3.5%減となっており、第2四半期(4-6月)は前期比0.0%減、年率0.1%に下方修正され、2四半期連続のマイナス成長となっている。経常収支は、貿易赤字が拡大しているため、前年同月よりも黒字幅が縮小している。
 フィナンシャル・タイムズ紙は、円高や輸出不振が続いていることが景気後退の要因となっているとし、日本経済がヨーロッパやアジアへの輸出から輸入を差し引いた純輸出(外需)に頼りきっていることが顕著に表れていると指摘した。またウォール・ストリート・ジャーナル紙は、景気回復への最後の望みとも言える公共投資が、4%増から1.5%増へと引き下げられたことは好ましくない動きだとした。各紙とも、不安定な外需や厳しい労働市場が続く中での景気回復は困難となると予測している。
 16日に衆院選を控える中、今回の発表によって浮き彫りになった景気後退は、政府や日銀にさらなるプレッシャーとなるだろうと各紙は報じている。ガーディアン紙(英)は、景気回復を実現できなかった民主党・野田政権の立場は既に危うく、選挙では安倍晋三総裁が率いる自民党がさらに優勢となるだろうと報じている。またフィナンシャル・タイムズ紙は、年明けには安倍新政権の要請に応える形で、日銀のさらなる金融緩和が期待されているとしている。
Japan enters recession before election
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/dd3dd156-4278-11e2-979e-00144feabdc0.html
Japan Falls Into Recession
http://online.wsj.com/article/SB10001424127887324024004578170082999684820.html
Japan falls into recession
http://www.guardian.co.uk/world/2012/dec/10/japan-recession

5.トンネル天井崩落事故、衆院選に与える影響
 12日のフィナンシャル・タイムズ紙は、2日に起きた笹子トンネル天井崩落事故を受けた、日本の公共事業に関する論争を紹介した。
事故の原因は老朽化であったことから、自民党は、公共物の改修に国としてもっと投資をするべきである、との考え方を示している。これにより、今回の事故のような悲劇の回避だけでなく、昨年起こった地震と津波のような大災害による被害を軽減できると主張している。
 一方で民主党は、公共事業費の増加は、財政状態の悪化を引き起こし、過去の過ちを繰り返すことでしかない、と主張している。地方分権を柱とする日本維新の会も、民主党に近い主張だ。
Japan tunnel collapse changes poll debate
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/88a7ac6e-436a-11e2-a68c-00144feabdc0.html

Text by NewSphere 編集部