「米国第一、うちは第二にしてね!」 トランプ揶揄のおもしろ動画が世界で爆発的人気

 トランプ大統領のキャッチフレーズと言えば、「アメリカ、ファースト」だが、オランダのニュース番組が「アメリカ・ファーストでもちろん結構ですが、オランダをセカンドにしてくれませんか?」といいつつトランプ大統領を辛辣に皮肉ったビデオを作り、話題になっている。これに触発されて、ヨーロッパを中心とした各国でも類似のビデオが作られ、果てはアメリカと仲が悪いイラン版まで登場している。

◆口火を切ったオランダの紹介ビデオ
 事の発端は、トランプ大統領が「アメリカ、ファースト! アメリカ、ファースト!」と連呼したあの大統領就任演説を受けて、オランダの風刺ニュース番組『Zondag Met Lubach』が、オランダを2番目にして欲しいとアピールする、政府制作と称するオランダ紹介ビデオを作ったことだ。ビデオはトランプ大統領にそっくりな声マネのナレーションでトランプ大統領に英語で語りかけ、自虐ネタを混ぜつつ「もちろんアメリカ、ファースト」と媚を売る体で、実は大統領を辛辣に皮肉る内容だ。

 ビデオでは、他のヨーロッパ諸国をこき下ろしつつ「ドイツ語はフェイクだ」などと主張。オランダ北部にある世界最大の堤防アフシュライトダイクは、「メキシコから来る水から我が国を守るために建ててメキシコ人に払わせた」と説明している(オランダ周辺の海はメキシコ湾流が流れている)。また、オランダの町並みを再現したミニチュア・パークのマドローダムでは、広場が非常に狭いので少しの人数でいっぱいにできる、と就任式会場の人がまばらだったことを皮肉っている。

 さらに、白人が黒人に扮するオランダのお祭り「ブラック・ピート」を「見たこともないような人種差別。あなたにきっと気に入ってもらえると思う」と言ったり、かつてトランプ氏が障害のある記者を真似てあざけったことを受けて障害のある政治家Jetta Klijnsma氏を紹介し、「あなたはきっと上手に彼女のマネができるでしょう」と述べたりしている。3分半ほどのビデオではこのように次から次へとトランプ氏をあてこすった内容が続き、最後に「我が国はアメリカにとんでもなく依存している」とした上で、「アメリカ、ファーストなのは全くもって理解します。でも、オランダ、セカンドってことでいいですか?」と結んでいる。ビデオは現在、YouTubeで2200万回以上再生されている(同動画は削除済み)。

◆各国が続々と「セカンド」を表明
 これを受けて、「オランダが2番目? あり得ない」と、ドイツ、フランス、イタリアなどのヨーロッパ諸国から、カザフスタン、イラン、モロッコなど各国が「我が国こそセカンド!」と主張するビデオを制作している。最初の数ヶ国はテレビ番組で制作されたもののようだが、現在は数えきれないほどのビデオがYouTubeに投稿されており、#everysecondcountsで検索可能だ。

◆皮肉あり、自虐ネタあり
 各国とも、基本は自虐ネタを織り交ぜつつトランプ氏の言動を皮肉る内容だ。例えばドイツ版は、「我が国には、スティーブ・バノン氏が敬愛する素晴らしい指導者がいた」とヒトラーの映像を流したり、「我が国は世界最高の戦争だった第1次世界大戦にも第2次世界大戦にも勝利した。違うと言う人がいたらそれは偽ニュースだ」と述べたり、「アンゲラ・メルケルの性器をわしづかみにはしないで欲しい。そこに何があるのか我々にも分からないから」と述べたりしている。そして最後に、「もし赤いボタンを押して核兵器でドイツを滅ぼしたくなったら、ここがドイツです」と言ってイタリアの地図を示してビデオは終了する。

 一方でアメリカと仲が悪く、今回トランプ大統領が発効した入国禁止令の7ヶ国リストに入ってしまったイラン版も制作されている。「我が国が一番恐れていること」として、隣国イラクと間違えて攻撃されるんじゃないか、と訴える。さらに、入国禁止令のリストに入ってしまったのも、実はトランプ氏が夜中にスマホで大統領令を書いていて、Iraqとタイプしたのにスマホに「もしかしてIran?」と出てきたので念のため両方とも禁止にしたのではないか、と続ける。一般的には仲の悪い2ヶ国とされているが、イランはアメリカに敵対心を持っていないと思わせる内容で微笑ましい。最後に、「アメリカ、ファーストは分かります。我が国がオランダや他のヨーロッパ諸国と勝負できるとも思わない。イランは何番目でも構わないので、せめてイラクより上にしてくださいね?」と締めている。

 一連のビデオには、ここでは紹介しきれない面白いシーンが満載だ。ナレーションは英語で、ほとんどのビデオに英語の字幕が付いているので、英語の聞き取りが苦手な人でも楽しめるはずだ。トランプ氏が大統領選に勝って以来、世の中にはネガティブなニュースが蔓延しているが、こうして笑いに変えてしまう人たちのセンスを楽しもう。

Text by 松丸 さとみ