ジョージ・マイケルさん死去に中国人が抱く特別な感情 「中国を変えた」ワム!の85年公演

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ジョージ・マイケルさん死去に中国人が抱く特別な感情 「中国を変えた」ワム!の85年公演

 12月25日、英人気デュオ「ワム!」の元メンバーで、ポップスターのジョージ・マイケルさんが死去した。世界中のファンが衝撃を受けたが、中国でも多くのファンがその死を悼んだ。文化大革命のトラウマから回復しつつある1985年の中国で、西洋のポップグループとして初めてコンサートを開いた「ワム!」は、その後の世代に多大な影響を及ぼしたという。当時の様子を、海外メディアが回想している。

◆敏腕マネージャーがライバルを阻止し、中国公演を実現
 中国は、文化大革命後の経済を立て直すべく、1978年に改革開放に舵を切った。しかし1980年代は、西洋の音楽や映画は政府によって厳しくコントロールされており、「ワム!」や同世代の音楽は発売禁止だったという(ロイター)。

 そのような時期に、中国で公演する西洋初のグループに「ワム!」を推したのが、当時マネージャーだったサイモン・ネピア-ベル氏だった。APによれば、同氏はコンサートが海外からの投資を呼び込むのに役に立つと主張して、18ヶ月かけて中国政府を説得したという。候補のバンドにはクイーンの名も上がっていたが、ネピア-ベル氏はボーカルのフレディ・マーキュリーさんの「どぎつさ」を強調することで妨害。より「健康的な」選択肢として「ワム!」を強力にプッシュし、北京と広州での2公演開催を勝ち取ったと、後に出版された本の中で暴露している(ウェブ誌『クウォーツ』)。

◆観客は興味津々も会場は厳戒態勢
「ワム!」の歴史的初公演は、1985年4月、北京の工人体育館で行われた。当時、多くの中国人がその音楽を聞いたこともなかったが、チケットを求め、行列ができたという。クウォーツによれば、当時のチケットの価格は30~40元(現在では約500~670円)で、平均的月収の3分の1にもなる価格だったうえ、手に入れるには雇用者からの「紹介状」が必要だったということだ。AP、ロイターによれば、学校や会社からチケットを配布された人々もいたようだ。

 北京公演には、1万5000人が来場。当時は緑やグレーの地味な色合いの服が主流だった時代で、肩幅の広いジャケットを着て脱色した髪の毛を揺らして踊るジョージ・マイケルさんと相棒アンドリュー・リッジリーさんの姿や、肩を露出したトップスに水玉模様のミニスカートのバックダンサーを見て、聴衆は困惑を隠せない様子だったという。また、会場にはたくさんの警官が配置されており、物音を立てたり、立ち上がったり踊ったりする客は制止された。これは、興奮した客を抑えられなくなること、暴動に発展する可能性を恐れたためだった(AP)。

 警官に見張られ緊張した会場だったが、ふと和んだ瞬間もあったようだ。聴衆の1人だった当時20代の男性によれば、電気系統のトラブルで会場のメインライトが消えるアクシデントがあり、ベーシストがその間ブレークダンスを披露するという事件があった。初めて見るブレークダンスは聴衆に大人気で、皆が喜んだという(AP)。

◆「ワム!」が元祖洋楽に
 APは、「ワム!」のコンサートは、エレキギターやロックンロールを知らなかった中国のミュージシャンに多大な影響を与えたと述べる。APの取材を受けた中国の音楽ライターは、当時の中国では香港からのポップソングが人気だったが、「ワム!」のコンサート以降、若者や音楽業界がロックに興味を持つようになったと語っている。

 ロイターも、コンサートが現在の中国のロックスターたちにとっての伝説になっているとも伝えており、ポップとはかけ離れた音楽を演奏するミュージシャンでさえ「ワム!」の音楽は知っている、という中国で人気のメタルバンドのメンバーの言葉を紹介している。

 ジョージ・マイケルさん死去の知らせに、中国人はソーシャルメディアを通じて哀悼の意を表し、「ワム!の公演で中国の洋楽への扉が開かれた」、「彼が中国を変えた」などのコメントが寄せられたという(ロイター)。APによれば、中国ではジョージ・マイケル、「ワム!」の名前にピンとこない若い世代も増えているが、大ヒット曲「ラスト・クリスマス」、「ケアレス・ウィスパー」などは広く知られているらしい。特に「ケアレス・ウィスパー」は1985年のコンサート前から中国語に翻訳されていくつかのバージョンで歌われており、中国における名曲中の名曲であるそうだ。

 ジョージ・マイケルさん自身は生前、中国公演では「大使みたいな役目だった」と述べているが、これをきっかけに中国における洋楽の地位が向上したことは間違いなく、その意味では、彼は真の大使であったのかもしれない。

(山川真智子)

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