習主席、サッカー必修化で2030年W杯に本気 日本抜き、世界レベルに成長との予測も

 日本を抜いて世界第2位の経済大国となった中国が、サッカーでも猛烈に追い上げを見せている。潤沢な資金を使った外国人選手獲得で、国内リーグのレベルは格段にアップ。習首相の意向も反映し、次世代選手の育成も本格的に始まる。

◆日本低迷のなか、中国は躍進
 アジアサッカーに詳しいジャーナリスト、ジョン・ダーデン氏は、ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)に書いた記事の中で、最近の日本サッカーの低迷について考察。日本サッカー協会は、2015年までに世界のトップテン入りを目指すとしているが、現状53位の今、目標達成に残された時間は少ないと述べる。組織力、勤勉さ、規律に秀でるが、独創性、主体性に欠ける日本には、アジアを制すことはできても、世界には遠いというのが、評論家、関係者の弁であると言う。

 また、同氏は、中国のクラブチームに変化が訪れていることを英ガーディアン紙で指摘する。観客動員数では中国スーパーリーグ(一部リーグ)は2011年にJリーグを上回った。2015年のアジア・チャンピオンズ・リーグでは、北京国安、広州恒大などが、日本勢不振のなか、活躍している。

◆資金力でトップ選手獲得
 中国のクラブチームをけん引するのは、外国人選手だ。投資家から潤沢な資金が流れ込んでおり、監督、選手にとって、アジアでもっとも稼げる場所となっている。かつてFC東京でプレーしたチャン・ヒョンス選手も、2014年に広州富力に移籍。中国人選手のレベルは、日韓の選手に比べ大きな違いはなく、戦術の理解や状況の見極めといった部分は未熟だが、外国人コーチや選手の影響を受けることで改善するだろうと述べ、外国人選手の存在が中国人選手の成長に役立っていることを示唆する(ガーディアン紙)。

 ダーデン氏によれば、破格の移籍金や給料を約束する中国からのオファーを断るチームや選手は少なく、すでに多数の韓国人選手を有する中国のチームは、Jリーグのトップ選手獲得も視野に入れているとされる(ガーディアン紙)。

◆目指すはワールドカップ
 英インディペンデント紙は、「何年にも渡り中国サッカーは国辱の種だった」と述べ、代表チームの最も素晴らしい能力は、がっかりさせる方法を巧みに見つけることだったと皮肉っている。中国の世界ランキング(男子)は昨年97位で、人口わずか9万人のカリブの小国アンティグア・バーブーダより下。過去30年間にW杯出場は、1ゴールもできず敗退した2002年の1回のみだ(インディペンデント紙)。

 しかし、この現状を変える時が来たようだ。中国は2030年のW杯開催に名乗りを上げる予定で、サッカー好きを公言する習主席のもと、選手育成のため、2017年までに2万校の学校でサッカーを必修にすると発表。これにより、新たに800万人の児童がサッカーを始めることになるという(ガーディアン紙)。

 インディペンデント紙は、中国では北京オリンピックのため、旧ソ連式のやり方で選手を鍛え上げ、記録的な数の金メダルを獲得した前例があると指摘しつつも、チームワークと個々の独創性がともに求められるサッカーに、その手法が合わないのではと述べる。

 一方、ダーデン氏は、中国の取り組みを肯定的に受け止め、まずはW杯誘致をきっかけに、国内リーグを世界有数レベルに、そして代表チームをアジア有数レベルに引き上げるべきと述べる。そしてその後は、おそらく日本を越えるだけでなく、世界のトップランクに入るまでに成長するだろうとしている(ガーディアン紙)。

 経済だけでなく、サッカー大国も目指し始めた中国。その勢いは止まりそうにない。

Text by NewSphere 編集部