米紙“デーブ・スペクターとは何者なのか?” 日本で最も有名な外国人タレントを特集

 毎日のようにテレビに登場し、ツイッタ―のタイムラインには彼一流のユニークなダジャレが次々に流れてくる。このように、私たち日本人にとって、最も身近なアメリカ人とも言えるデーブ・スペクター氏だが、その人物像については意外と知られていない。デーブ氏は「CIAのスパイ」だという噂がしばしば囁かれるが、こんな話が多少なりともリアリティを持つのも、彼がどれほど謎に包まれているかの証左と言えるだろう。一体、彼はどんな人物で、アメリカのメディアは彼をどのように伝えているのだろうか。

【ジョークの達人としてのデーブ・スペクター氏】
 このほど、ニューヨーク・タイムズ紙が掲載した記事は、デーブ氏は30年にわたり日本の騒々しいトークショーの世界に居座ってきた人物であると描写し、彼は「おそらく日本に住むアメリカ人で最も認識されている」と紹介している。

 同紙は、ワイドショーやCMへの出演、ハリウッドのセレブへのインタビューのほか、主に50万人のフォロワーを持つツイッタ―で披露される、おなじみのジョークもデーブ氏の多忙な生活の一部だとする。

 デーブ氏を特徴づける、この「ジョーク」については、早くも1980年代の終わり頃には彼の得意分野だと認知されている。来日の6年後の、1989年にロサンゼルス・タイムズ紙に掲載された記事には、「昼でも夜でも、どんなチャンネルに合わせても、そこにはデーブ氏がいる。流暢な日本語でジョークを飛ばして」という記述が見られる。

 2011年にニュースサイト”kotaku”に掲載された記事でも、一例として「個人情報が漏れる失礼なゲーム機→無礼ステーション」というデーブ氏のジョークを挙げ、日本語の音韻的観点からダジャレを解説している。

 母語ではない日本語で巧みにジョークを飛ばすデーブ氏のイメージは、アメリカでも強調されているようだ。

 また、この点に関して、”kotaku”が伝える日本人が持つアメリカ人のイメージについての記述も興味深い。記事は、日本では多くの人が英語とアメリカ文化を理解せず、そのため一般にアメリカ人は面白くないと思われていると指摘する。そして「アメリカン・ジョーク」というフレーズも、単に面白くないものとして使われると説明している。

【1984年当時の日本の外国人タレント事情】
 デーブ氏が最初に来日したのは1983年。米放送局のABCは若い脚本家だったデーブ氏をある番組のコーナーのプロデューサーとして東京に送った。ニューヨークタイムズ紙によると、はじめは数週間の滞在の予定だったというが、彼は期間を延長して「日本で見つけたクレイジーなTV番組から」面白いものを伝え続けさせるようABCを説得したそうだ。

 1984年に最初のテレビ出演を果たすと、すぐにオファーが相次いで届いた。当時、日本の外国人タレントといえば、英語教師かモルモン教の宣教師がほとんどで、デーブ氏の立ち回りは際立っていたそうだ。

 ロサンゼルス・タイムズは当時の状況をより詳しく伝えている。その頃、日本のテレビに出るアメリカ人はケント・デリカット氏、ケント・ギルバート氏、チャック・ウィルソン氏の3人しかおらず、デーブ氏は「日本人が理解できるのは私だけだった」と同紙に答えている。

 そうして外国人タレントとして一躍スターになったデーブ氏だが、1989年の時点では、アメリカに帰りたいと心境を明かしている。しかし、この時に帰国しなかったのは、日本で稼ぐことができる多額の収入が理由だったそうだ。

【デーブ氏の変化、日本で成功できた理由】
 同紙のインタビューでは、デーブ氏は個人的なレクチャーからも多額の収入を得ていたと明かしている。「極端に限られた教育しか与えられず、レクチャーする資格はなかった。でも誰が不満を言うんだ?」と悪びれる様子はない。もっともこの発言が国への郷愁から引き起こされた強がりなのか、当時の日米関係から意図的に強調されたコメントなのかは、現在からは知る由もないが、非常に興味深い記述ではないだろうか。

 日本の国際的な立ち位置の移り変わりを冷静に押さえた、最新のニューヨーク・タイムズ紙の記事では、多国籍のタレントが登場している日本で、デーブ氏は過ぎ去った過去の遺産のように見えるが、他方で他のタレントにはなし得ないステータスを打ち立てていると伝えている。

 「私は人生90%を日本で生きてきた」と語るデーブ氏は1989年当時とはだいぶ印象も異なっているように感じられる。同紙は日本で成功した彼の持つ力について、日本や、日本の持つ繊細さに対しリスペクトを持とうとする意欲から説明している。

 デーブ氏は記事の最後で、自分がどのように良い道筋を歩くかを知っており、だから日本人は自分にあらゆること、時には敏感な国内問題さえも話すことを許す、という認識を示した。曰く、「それは私の本物の業績だよ」ということだ。

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Text by NewSphere 編集部