“古代日本の神秘と温かいユーモア” 林業映画『WOOD JOB!』海外で高評価 宮崎駿監督も原作絶賛

 矢口史靖監督の最新作『WOOD JOB!(ウッジョブ!)』(5月10日公開)が、7月にニューヨーク・アジア映画祭に出品された。文化・エンタメ情報系サイトがレビューを掲載している。日本の林業の現場を描いたこの映画は、海外ではどう評価されているだろうか。

【味わいのあるコメディ作品】
 『WOOD JOB!』は、三浦しをんのベストセラー小説『神去なあなあ日常』の映画化作品だ。林業を営む山村「神去村」を舞台に、主人公の少年、平野勇気(染谷将太)が成長していく姿を描いたコメディだ。

 『twitch』の評によると、この作品は「主人公があまり一般的ではない種類の芸術、スポーツ、または職業を追求する中で、あらゆるバカげたおふざけが起こる」コメディという形式に則ったもので、矢口監督はこの形式を得意とするという。今作は監督の「最高傑作のひとつ」に数えられている。

 また、物語の流れは「予見可能ではあるが、そのことは大した問題ではない」とし、「矢口監督が見せる温かく素晴らしいユーモア」を絶賛している。更に、「古代日本の伝説や神話に触れる神秘主義」がコメディに味わいを加えているとも述べ、特にこの点について、ジブリの宮崎駿監督も賞賛していると伝えている。

【「成長物語」を見せる好演】
 『Asian in NY』は、この映画を「少年の成長物語」であると捉えている。第一印象では「怠け者で無能な非行少年」である勇気は、林業研修生として訪れた山村での試練を経て責任ある若者に成長していく。勇気を主に鍛えるのは先輩となる飯田ヨキ(伊藤英明)だが、彼自身も試練の下にあり、当初の「獣のような」性格を和らげていく。結果、変則的な友情で結ばれるこれら二人のキャラクターが観客に永続的な印象を残すこととなる。

 『twitch』は、「伝統的な、あたたかい共同体での生活を生き生きと描き出すのに一役買っている」とキャストの演技を賞賛している。また、主役の勇気を演じた染谷は、これまでは強烈な、時には虐げられるような役柄を多く演じてきたが、喜劇役者としてのスキルもあることを証明したと述べる。また、ヒロイン役の長澤まさみも、恋愛対象としての役割を「巧妙に、月並みにならず」演じた、と評している。

【詳細な描写が産むリアル】
 もう一点、海外メディアの評価が高いのが、林業と山村での生活の描写だ。『Asian in NY』は、この映画は日本の風景を映し出すのに膨大な尺を割き、大木や山野の描写は登場人物のみならず観客にも畏怖の念を起こさせるという。また、監督の膨大な時間と努力の結晶である林業の詳細な描写が、リアリティを生み出していると評価する。

 『twitch』は、「滑稽な表面の奥ではこの仕事をする人々への深い尊敬が共鳴」しているという。また、監督は、ユーモアセンスと「ワイルドでいかれた大量のギャグ」によって、説教臭くなることも我々の知性を侮辱することもなく、「豊かな文化と都会での快適な生活を可能にするきつい労働」を思い起こさせることに成功していると評する。

神去なあなあ日常 [Amazon]

Text by NewSphere 編集部