2022年W杯、日米韓などで再投票か? ソニーなど大手スポンサーもFIFAに調査圧力 7月の報告書に影響か

 サッカー・ワールドカップ2022年大会の招致活動に際し、開催を勝ち取ったカタール陣営による買収や利益供与の疑惑が持ち上がっている問題で、FIFA(国際サッカー連盟)の大手スポンサー5社が揃って徹底調査を求める声明を発表した。ブルームバーグ、ロイター、BBCなどの英国メディアが報じている。

【大手6社のうち5社が声明】
 事の発端になったのは、匿名のFIFA関係者による内部告発だ。当時のFIFA理事で、元アジアサッカー連盟会長のビン・ハマム氏(カタール出身)が、世界のサッカー関係者に賄賂や利益供与を持ちかけたとして、その証拠とされる大量の文書やEメールが英・サンデータイムズ紙に寄せられた。同紙はここ2週間ほど、この疑惑についてキャンペーンを張っている。

 こうした状況下で、FIFAは倫理委員会による調査を進めており、来月には報告書がまとまる見通しだ。その内容によっては再投票が行われる可能性もある。

こうした情勢を受け、FIFAのスポンサーも声を上げ始めた。ロイターなどによると、大手スポンサー6社のうち5社(アディダス、ソニー、VISA、コカ・コーラ)が、調査の徹底などを求めるコメントを発表している。UAE(アラブ首長国連邦)の航空会社、エミレーツだけが今のところコメントを出していない(BBC)。

【ソニーの影響力は?】
 ロイターは「このようなデリケートな問題で、スポンサーが公式に発言するのは異例だ」と記す。FIFAの昨年の収入は約14億ドルで、そのうちスポンサー収入は4億ドル余り。放映権料約6億ドルに次ぐ重要な資金源だ。それだけに、スポンサーからの圧力は今後の動きに与える影響が大きいと見られている。中でも今年契約が切れ、延長交渉を控えるソニーの影響力は大きいと、ロイターは見ている。

 ソニーは、東京本社のスポークスマンが「FIFAのパートナーの一員として、告発が適切に調査されることを期待する」「我々は引き続き、FIFAの理念や倫理、フェアプレー精神が守られることを期待している」などとする声明を発表した(ブルームバーグ)。

 FIFAは「我々はアディダス、ソニー、VISAなどのスポンサーと常にコンタクトを取っている。スポンサー企業は倫理委員会が調査を進めている現状に100%満足している」とコメントするなど、火消しに必死だ。また、渦中のビン・ハマム氏は既にFIFAから身を引いており、ブルームバーグの取材に対し「話すことは何もない。新しい人生を楽しませてくれ」などと述べたという。
 
【大物の名前が次々と挙がる「疑惑」】
 BBCは、独自に入手したビン・ハマム氏のEメールなどをもとに、次のような疑惑が持ち上がっていると公式サイトで報じている。

・2018、2022年W杯の開催地を決める投票の1ヶ月前に、ビン・ハマム氏はロシアとカタールの「二国間関係」についてプーチン大統領と話し合うために、クレムリンを訪ねた。

・タイのFIFA理事の便宜を図るために、カタールとタイの天然ガス取引を進める政府間協議を仲介した。

・元FIFA理事で、元ドイツ代表の「皇帝」ベッケンバウアー氏を、投票の5ヶ月後にコンサルタント契約を結ぶ石油・ガス関連企業のトップとともにドーハに招いた。

・ブラッター会長を含むFIFA理事とカタールの王族との会合をセットした。

・カタール関係者とUEFA(欧州サッカー連盟)のプラティニ会長の会合をアレンジした。プラティニ会長は後に、カタールに投票すると公言した。

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Text by NewSphere 編集部