村上作品の“学生運動”から影響も 台湾民主化を描く映画「GF*BF」 監督が語る

 台湾激動の30年を追った映画「GF*BF」が2014年6月7日(土)公開される。民主化前夜、1990年に起きた大学生らによる「野百合学生運動」を取り上げた作品だ。ヤン・ヤーチェ(楊雅[吉吉])監督は「日本の小説で描かれた学生運動と青春群像は、私に大きな啓発を与えてくれました」と語る。

【ひまわり学生運動にも参加 「これほど早く起きるとは」】
 戒厳令解除から民主化、現在までの30年を、男女3人の成長、恋愛、葛藤にからめて描く「GF*BF」。映画中盤には「野百合学生運動」に3人が参加し、台北市中心部・中正紀念堂前に座り込むシーンが登場する。学生たちが上げたシュプレヒコールは、民主化実現への追い風となった。

 台湾では今年3月、中台サービス貿易協定に反対する学生らが、23日間にわたって立法院(日本の国会に相当)を占拠する「ひまわり学生運動」が起きたばかり。台湾での「GF*BF」の公開から1年半後の出来事だった。監督は「学生運動がこんなに早くまた起きるとは思っていませんでした」と話す。

 「映画の撮影前から台湾社会にストレスが大きくなっていると感じていました。何か闘争が起きるのではないかと。ひまわり学生運動の間、私もしばしば現場へ行き、映画を上映したり、学生や市民と話しました。今回の運動に参加した人々が、今の情熱、街で闘争に参加した理由を記憶にとどめてほしい。そうすることで、台湾はさらによくなっていくに違いないと思います」

【映画のテーマは自由の追求 日本の小説読み参考に】
 台湾で「野百合学生運動」が起きた時、監督は高校生だった。1987年に戒厳令が解除され、社会運動の機運が高まり、民主化が実現される過程をつぶさに目撃してきた。後に社会に出てから運動に参加する回数が増え、声を上げることも多くなったという。「GF*BF」にはそんな自身の経験も反映されている。

 「この映画の重要なテーマは、すべての人が自由を求めること。感情と心を自由にすることです。私は日本の安保闘争時代の小説を何冊も読みました。村上春樹や村上龍など、多くの日本の作家が学生運動の様子を描いています。闘争のテーマは台湾とは違いますが、日本の小説で描かれた学生運動と青春群像は、私に大きな啓発を与えてくれました」

【心や人生が本当に自由なのか 日本の皆さんも見つめ直して】
 監督はこれまでにも「日本の小説をよく読む」と語ってきた。特に好きな作家は向田邦子。台湾で翻訳書が出るたびに読んだという。「日本の小説の雰囲気は、中国や台湾とまったく違う。言葉は劇的でも、激しくもない。日本人は観察力が鋭く、注意深く、ささやかなものに目をとめる。物の見方、考え方も独特で、いつも驚かされる」と話している。「GF*BF」の公開を前に、日本に向けてこう呼びかけた。

 「私は『青春の解釈』という点で、日本の小説に大きく影響されました。この映画をご覧になった皆さんは、それを感じてもらえるのではないでしょうか。日本では長い間、大きな運動が起きていません。社会に対して冷ややかになり、政治に失望しているため、社会問題に無関心になったからだとされています。観客の皆さんには、この映画からパワーを得て、自分の心や人生が本当に自由なのか、見つめ直してほしい。皆さんの心や愛が自由になるよう願っています」

■映画概要
「GF*BF」(2012年、台湾 原題:女朋友。男朋友)
監督:ヤン・ヤーチェ
出演:グイ・ルンメイ(桂綸[金美])、ジョセフ・チャン(張孝全)、リディアン・ヴォーン(鳳小岳)

2014年6月7日(土)、シネマート六本木ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

公式サイト

作品写真:(c)2012 Atom Cinema Co.,Ltd.,Ocean Deep Films,Central Motion Picture Corporation,Huayi Brothers International Media All Rights Reserved.

Text by NewSphere 編集部