中国の腐女子が英「シャーロック」に熱狂 その背景とは?

 “腐女子”とは、男性同士の恋愛を題材とした小説や漫画などを好む女性を指す言葉で、本人たちが自分の趣味を「腐っている」と自嘲的に称したものである。昨今中国でも腐女子現象が表面化している。海外メディアは、その文化的背景を分析した。

【中国の腐女子の間で大人気BBC「シャーロック」】
 英BBCの「シャーロック」が中国で熱烈な人気を誇っている。シーズン3の第1話はイギリス本国での放映わずか2時間後に動画サイトに配信され、一晩で300万回も視聴された。中国新聞網によると、多数のサイト上で2人をゲイに見立てたファンの二次創作が紹介されており、根底にあるかもしれない2人の隠れた関係を想像することが、腐女子と呼ばれる熱烈なファンを魅了しているという。

 同紙によると、“腐女子”という言葉は1997年に中国で登場し、日本漫画の“ボーイズラブ”に興味を持つ少数の女子を指していたが、年々増加し今ではポップカルチャーにを影響するほどになっている。WIREは、腐女子現象が長年同性愛を差別し、同性愛物語を取り締まってきた中国で起きていることに意義があると指摘する。

【東洋と西洋における“腐女子”のイメージ】
 中国新聞網では、腐女子の目的は美的価値の鑑賞であり同性愛のセックスへの執着はあまり好まれないのがほとんどの場合で、汚らわしい趣味と位置付ける姿勢は変えていくべきと論じている。”ボーイズラブ”というジャンルで腐女子が夢中になるのは、美しい男性同士のロマンチックな恋愛で、実際の同性愛とは大きな隔たりがあるという。

 また西洋の世界で腐女子はファンガール(取り巻き)と呼ばれるものであるとし、東西におけるセックスと同性愛に対する意識の差を指摘した。自分が腐女子であることを公言しない東洋女性とは異なり、西洋の女性は自分たちの“特別”な趣味を恥じることはなく、隠れたサブグループを形成する必要もないと言及した。

【腐女子の起源はイギリスにあった?】
 日本の調査でイギリスに腐女子現象の起源があることが分かったと、中国新聞網は報じている。産業革命後、女性の社会的地位と自己認識が徐々に向上していく中、男性に失望し、伝統的な道徳に虐げられた女性たち。道徳的な非難を受けることなく自分たちの欲求を満たすことのできる”ボーイズラブ”にロマンチックな空想を投影してきたという。

 同紙は、これがまさに今日東アジアの女性が直面している問題だと指摘する。圧倒的な女性蔑視が続く東アジア文化において高まる女性の意識が、性的であり耽美的でもある美しい男性同士の愛を鑑賞することを通して、自分たちの存在を宣言しているのだという。

【社会における女性の意識向上】
 さらに中国新聞網では、中国での腐女子の表面化は国のさらなる社会的開放性、多様性とともに、社会における自分たちの役割の多様性に気付いた女性の意識向上を反映していると論じた。一方で、「腐女子」と定義づけられるサブカルチャーがの必要性でがある限り、改革への道のりは長いだろうとも指摘した。

 またWIREは、同性愛者であるのに結婚を強いられる国、ストレートのふりをすることを求められる国、偽の結婚をしなければ同性愛者が自分の人生を生きることのできない国において、「腐女子」は性的少数派に対する意識の改善を象徴していると結論づけた。

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Text by NewSphere 編集部