世界に一つしかないものを作る! NYで注目の若き日本人女性ケーキ・デザイナー

 「ケーキ・デザイナー」という職業をご存じだろうか。イベントや結婚式や誕生日など、特別な日のためのケーキを、クライアントの好みやデザインの希望に合わせて、考案し、制作する。本物と見紛うほどの精緻で美しい花束、カラフルでポップな摩天楼。ケーキの上に、手間暇かけて編み出される「アート」は、食べてしまえば跡形もなくなるが、思い出は集った人々の舌と心に刻まれる。

【日本人女性が、デザイン・ケーキの本場で注目されるまでの道】
 このデザイン・ケーキの本場アメリカ、ニューヨークで、新進気鋭のケーキ・デザイナーとして注目を集める若き日本人女性がいる。鈴木ありささん(25)だ。鈴木さんは、一昨年の冬、ニューヨーク州アップステートにある「世界三大料理学校」の一角にして「料理界のハーバード大学」の異名を取るCIA(カイナリー・インスティテュート・オヴ・アメリカ)を卒業した。卒業直前には、学校代表に選ばれて参加した国際的なコンペで最優秀賞と特別賞を受賞。卒業後の昨年も個人的に参加して、2年連続の入賞という快挙を達成した。

 幼少期から、母親が作る誕生日のケーキを楽しみに育った。アメリカに留学経験のある母親の、本場のお菓子の本は見ているだけでわくわくした。やがて、見よう見まねで作るようになり、友達が喜んでくれるのがうれしくて、はまっていった。

 趣味からプロへの転機は、玉川大学芸術学部芸術学科の2年時、ボストン旅行中にケーキ・デザイナーという職業に出会ったことだった。折しも、大学で進級を希望していた学科がなくなったという事情が重なり、留学を決意。半年間の職場経験も入学の要件となるCIAのレベルの高さに二の足を踏む鈴木さんの背中を押したのは、「どうせやるならその道のちゃんとした学校に行きなさい」という母親の言葉だったという。

 現在、彼女は、企業や有名人のイベントや結婚式、誕生日などの特注ケーキを制作するファッション・シェフという会社で第一アシスタント・ケーキ・デザイナーとして活躍している。「世界に一つしかないものを作る」ことをモットーに、将来は独立して、日本にデザイン・ケーキを広めるのが夢だという。

【ケーキ・デザインへの飽くなき情熱】
 そんな彼女が、ガーディアン紙の「質問受け付けコーナー」に登場し、プロのケーキ・デザイナーとして質問を募った。「この仕事に就いて、一番「びっくりしたこと」は?」「これから目指す人へのアドバイスは?」「収入は?」「一番の失敗は?」――などなど、数々の質問が飛んだ。

 「いけなかったと思うのは、始めのうち、自分の仕事の価値を読み違えて「安売り」しすぎてしまったこと。収入は人によってばらばら。時間がかかるけれど、フレッシュなうちに届けなければならないという性質上、忙しさに波があるから、固定給ではなく時給がフツウ。これから目指す人は、なによりも「企画力」を磨いて! それが一番大事。わたしも、いつもヒントを探しているの。仕事に就いて驚いたのは、日本では珍しい職業なおかげで、メディアの注目を受けたこと。雑誌やテレビに自分が登場するなんて! 本当にびっくりしたわ」。

 初々しく、仕事への誇りと喜びがにじみ出るコメントが、将来への期待を誘う。日本のイベントや結婚式を、彼女の「世界にたった一つの作品」が飾る日が楽しみだ。

Text by NewSphere 編集部