世界を飛び回る、土偶ゆるキャラ「ペッカリー」 そのゆるくない活躍とは

 今年のゆるキャラグランプリも間近だが、エクアドルの「世界最古のゆるキャラ」を名乗る「ペッカリー」が現在、注目を集めている。

【そもそも「ペッカリー」の特徴は?】
 このゆるキャラのモデルは、エクアドルで約3,000年前に発掘された土偶のツチイノシシである。これを、岡山県備前市にあるBIZEN中南米美術館がキャラクター化したことで、「ペッカリー」が誕生した。つまり、「ペッカリー」の生まれは、古代エクアドルであり、日本で生み出される一般的なゆるキャラと全く異なる。

 そしてこの血筋を引き継いだゆるキャラ「ペッカリー」自身、きわめて個性的である。まず、モチーフの土偶そのものを表現した、素朴でアンニュイな外見。さらに、アンデスの民族音楽に合わせ「オイラ土偶のペッカリー」と歌い上げる独特のメロディーのテーマソング。これらは、通常の日本のゆるキャラのイメージと一線を画し、古代中南米出身という強い自己主張が感じられる。

【海外から見ると・・日本のゆるキャラとペッカリーの違い】
 ゆるキャラという言葉自体は、海外でも「yuru-kyara」として通用する程、日本固有の文化として定着している。

 例えば、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、ゆるキャラグランプリ2011チャンピオンに輝いた熊本県のマスコット「くまモン」を、2012年12月、画像付きで大きく紹介した。また最近話題となっている「ふなっしー」も、9月のロンドンロケでの人気ぶりが動画サイトで紹介され、評判を呼んでいる。

 これらの報道をまとめると、日本のアイディアで生まれた新しいマスコットを、海外が、驚きと新鮮さをもって歓迎する姿勢が見られる。

 これに対し「ペッカリー」についてはどうか。現地エクアドルのメディアは、今春、関連者一行が同国を訪問した際、大使館が「ペッカリー」を「古代エクアドル・ゆるキャラ大使」として正式に任命したことを報道した。また国内では、中南米の民族衣装をまとってアンデスの高原にたたずむペッカリーの姿を「お里帰り」と表現した。

 これらの報道からは、日本で大切に育てられたマスコットが、長い年月を経て母国に戻り、それを両国の絆の深まりとして喜ぶ感覚がうかがわれる。

【今後の展開は?】
 まとめていえば、「ペッカリー」は、エクアドルの土偶が、3,000年の年月、15,000kmの距離を乗り越えて日本に伝わり、BIZEN中南米美術館の努力を経て日本全国のファンを獲得するに至った、他に例のないゆるキャラといえる。

 さらに両国の貿易関係においても、今夏、「Peccari banana」としてエクアドル産バナナのキャラクターに起用されたことが報じられた。今後も、その個性を活かし、日本と中南米の架け橋として活躍していくことが期待される。

Text by NewSphere 編集部