「許されざる者」主演・渡辺謙の思いとは

 クリント・イーストウッド監督・主演の「許されざる者」は、1992年にアメリカで公開され、アカデミー作品賞などを受賞した名作である。13日、本作品の日本リメイク版が、渡辺謙主演にて公開される。

 渡辺謙は、2003年の「ラスト・サムライ」で米アカデミー賞の助演男優賞候補にノミネート。その後は、「バットマン ビギンズ」、イーストウッド監督の「硫黄島からの手紙」に出演するなど、ハリウッドで活躍している。2014年には「ゴジラ」のハリウッド再リメイク版にも出演予定。さらに、クリスチャン迫害を題材にした、遠藤周作原作、M・スコセッシ監督による「Silence」にも出演する。

 渡辺謙の本作品にかける思いを、海外メディアが報じている。

【イーストウッド版との違い】
 渡辺謙は、イーストウッド版は、「正義の味方が悪者に勝利する」という西部劇の固定観念を拒み、何が真の善対悪なのか、根本的な問いに取り組んだ魅力的な作品だと語る。

 リメイク版は、この問いを探求するだけでなく、複雑な心理描写、人種差別のような社会的問題も絡めているという。

 生きるために重荷に耐え、苦しみ、息を殺す人々の姿は、現代を反映させているという。さらに、「イーストウッド版はシンプルで真っ向勝負だった。リメイク版は、全ての登場人物が深い泥の中でもだえるようにして、問題意識を投げかける」と、同氏は語っている。

 またこの作品は、マカロニ・ウエスタンと日本の時代劇との関係を入れ替えたものとも紹介されている。元来、アメリカの西部劇は、日本映画の演出に大きく影響を受けてきた歴史があり、日本のチャンバラ映画をリメイクしたものもあった。実際、イーストウッドをスターダムにのし上げた「荒野の用心棒」は、黒澤明監督の「用心棒」をリメイクしたものだ。

【日本人俳優としての渡辺謙、誇りと危機感】
 渡辺謙は、日本人俳優として渡米したことを強調し、それがアイデンティティの重要な部分だと語っている。同氏は、日本映画の伝統に誇りを抱く一方、日本映画の過去の栄光が忘れられてしまうのでは、とも危惧しているという。

 そのため、リメイク版「許されざる者」が、新たな外国ファンを勝ち取る助けになることを願っているようだ。

【周囲の評価】
 本作の李相日監督は粘り強い演出で知られ、渡辺氏も「自分はあんなに厳しくなれない」と語るほどだ。その李監督は、「渡辺謙は決して言い訳をしない」と語り、どんな状況でもブレない彼の演技に対する姿勢を絶賛している。

Text by NewSphere 編集部