ワインの世界市場:中国が新たな世界秩序の台頭をけん引

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著:Jacques-Olivier Pesmeケッジビジネススクール Director of the Wine & Spirits Academy)

 国際ブドウ・ワイン機構(OIV)の年次報告書で発表された最新の数値を見ると、世界のワイン産業が大きく変化していることがわかる。長きにわたってヨーロッパ諸国がけん引してきたワイン産業だが、近年は中国などの国が生産、消費の両面で頭角を現し、王者に挑んでいる。

 世界的にワイン需要はわずかに上昇している。ピーク時だった2008年の約2億5000万ヘクトリットル(hl)からは2億4200万hlに減少したものの、2014年の2億4000万hlからわずかに増加しており、長期的な成長の兆しが見られる。

 1人当たりの消費量は、かつて日常的にワインを飲んでいたフランス、スペイン、ポルトガルでは変化なし、もしくはわずかに減少している。しかし、そのギャップを埋めるにとどまらない勢いを見せるのが、週に1~3回ワインを飲むという消費者を抱える世界市場だ。

 他にも業界にとって追い風となる兆候がある。それは、人口の多い国々で新たな消費者が増えているということだ。1990年代初頭には世界第6位だったアメリカ市場が、2016年には1位(3180万hl)に上り詰めた。そしてフランス(2700万hl)、イタリア(2250万hl)、ドイツ(2020万hl)がそれに続く。

 2017年の経済が下向きのブラジルでも、すでに大きなワイン市場が確立されている。さらにインドにも大きな期待が寄せられている。

 これらの新規市場の台頭は現地生産の増加が大きく起因しており、ワイン生産国の数もまた増加している。オーストラリアの例が最もよく知られているが、カナダをはじめとする国々についてはほとんど知られていない。

 この数年間、カナダでのワイン消費は着実に増加している。そして同国政府はカナダ産ワインの輸出を目標に、国内生産を促進する取り組みを行っている。

 エチオピアでの現地生産もまた増加している。エチオピアの高地はブドウ栽培に適しており、非イスラム人口も多い(1億人のうち約66%)。

◆中国の台頭
 しかし、規模と定量の両面で業界変革をけん引しているのは中国だ。大地の恵みであり、長い歴史に根付いたワインは、中国において象徴的価値を大いに享受している。また、社会的な「ハイクラス」の証としても機能している。

 いずれにせよ、中国のワイン消費量はドイツに続く世界第6位(1730万hl)だ。2017年現在の人口は14億人で、中国市場の潜在性は非常に大きい。

 新たな市場、そして政府はいずれも国内ワイン産業の基盤構築に取り組んでおり、世界第2位の規模を誇る中国の栽培面積は2015年から17%増の847キロヘクタールに及ぶ。実に中国がフランス(現在785キロヘクタール)を抜き、スペイン(975キロヘクタール)に次いで2位になったのは2015年のことだ。

 中国はこの先5年間でスペインを追い抜くと予想されている。ブドウ栽培は、山東省、河北省、天津省そして新疆、寧夏、内モンゴルの自治区など多くの地区で広く行われている。

 どこの国にも言えることだが、地場産のワインがあれば消費者はまずそちらを好む傾向がある。そしてワインに慣れ親しむにつれて他国産のワインにも手を伸ばすようになる。これが国際貿易成長の重要な推進力となる。現在、世界中で生産されるワインの40%が輸出されているのもこのような理由からだ。1990年代初めにはわずか20%だった。

 ワインの売れ行きというのは文化的背景やワインの世界の知識、そして感覚的な価値を分析するテクニックによって大きく左右される。しかし、世界に知られる専門家がしかけた流行がきっかけになることもある。

 したがって、新たにワイン産業を興した国々は他国にワインを売り込むとともに、その認知度とブランド力を着実に構築していかなければならない。これもまた国際貿易を活気づける効果がある。

◆価格では引き続きフランスがリード
 フランスのワイン産業を見ると、その様相は変容しているものの、基盤はしっかりと残っている。現在もなお、フランスはスペインやイタリアと生産量世界一位の座を争っている。また、価格面でいうと、今も変わらず世界をリードする存在だ。

 2016年、イタリアのワイン生産量が5090万ヘクトリットルだったのに対し、フランスは4350万ヘクトリットルにとどまった。しかし、フランスのワイン輸出額は82億ユーロ(約1兆181億円)で、イタリアの26億ユーロ(約3227億6400万円)を3倍以上引き離し、世界のワイン市場総取引額の28.5%を占めている。

 この数値を見ると、フランスのワインが付加価値の高い製品として認識、消費されていることがわかる。同様に、フランスが今も自国のワインの価値を存分に活かすことに秀でていることが見て取れる。スペインも輸出量ベースで見れば最大手輸出国と言えるが、国際市場における単位当たりの価格はいまだに低く、総額でも26億ユーロだ。

 すぐに頭に浮かぶのは、他とは一味違う卓越したスパークリングワインとして名高いシャンパン、ボルドーやブルゴーニュ、最近のものではプロヴァンスロゼだ。

 また、フランスのワインほど多くの国に輸出されるワインは他にない。輸入を始めたばかりの業者は、他の生産国よりまず初めに、フランスのワインを「リスティング」するところから始めるのが一般的だ。このことからもフランスのワイン産業がいかにイメージ、品質、多様性の点で世界中のワイン愛好家に浸透しているかがわかる。

◆戦略的に考える
 今後数年間、ワイン生産国が引き続き国内外のマーケットシェアを維持、拡大する中で、進行中の気候変動にも適応していく必要がある。

 たとえば、2016年のブラジルのワイン生産高は強力なエルニーニョ現象によって前年の2015年から55%減少し、干ばつに見舞われた南アフリカ共和国でも同様だった。これに対処するために、専門的なリサーチスクールをはじめとする戦略的なアプローチ開発が進められている。

 世界中のすべてのレベルで、業界の競争力を高め、新たな国際的課題に取り組むために、出資者が出資者と政府や政策決定者が力を合わせている。

(今年度のVinexpo ワイン&スピリッツのトレードショーは2017年6月18日から21日にフランスのボルドーで開催予定。)

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by isshi via Conyac
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The Conversation

Text by THE CONVERSATION