悪化する世界からの評判がアメリカの貿易を危険にさらしている

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著:Daniel Korschunドレクセル大学 Associate Professor of Marketing )、Boryana V Dimitrovaドレクセル大学 Clinical Professor of Marketing)、Yoto V. Yotovドレクセル大学 Associate Professor of Economics)

 USニュース&ワールド・レポートは先日、毎年更新している「ベスト・カントリー」ランキングを発表した。これは世界中から集めた数千人による、外国に対する評価をもとにしている。スイスが80カ国中1位となり、カナダ、イギリスと次いだ。

 驚くことに、アメリカは4位から7位と3つも順位が下がった。アメリカは「ビジネスのしやすさ」「人権と民主主義の尊重」「教育の質」の項目で低く評価された。これらの結果はフォーブスによる別のランキングに見られるアメリカの評判低迷の結果と一致する。

 評判ランキングなどは確かに興味深い会話のネタとなるが、果たして国家評判に大した意味はあるのだろうか。

 経済学者と経営学者である我々3人は、国家評判の変化がどうその国の貿易関係を影響するかを調査することにした。すると 、驚異的な結果が得られた。

◆国家が名声を築く方法
 国家評判とは、他国民による世界での地位の認識を指す。

 評判を測るための決まった正しい方法は存在しない。USニュースの調査では回答者に「アドベンチャー」や「力」、「生活水準」「市民権利」などのカテゴリー別に国家評価を問うが、フォーブスの調査はビジネスの分野に集中している。また、ある国の評価は世界中の地域によって異なることもある。

 人々は、買ったことのあるもの、会ったことのある人、映画などで見たことのあるイメージなど、その国に関する経験を包括的に考慮し評価を形成する。

 また、政治や外交も国家評判を決める主要な要素である。その分野において、ドナルド・トランプが問題に寄与しているのかもしれない。

 ピュー研究所は去年、EU内10カ国の国民を対象に調査したところ、85パーセントの回答者がトランプは世界情勢に対して「正しいこと」をしないだろうと答えた。また、4月に発表された「ベスト・カントリー」ランキングの調査では、世界中の回答者のうち75パーセントが大統領選挙後のアメリカに失望したと答えた。

 その結果として、今年のアメリカへの来訪者は2016年よりも430万人も少なくなると専門家は予想している。 これは、移民政策の変化が観光客を突き放していることも要因としてある。

 また、アメリカの主要な貿易相手との関係が悪化しているという問題がある。例えば、メキシコはカナダに次ぐアメリカの最大輸出先なのだが、大統領が国境に壁を造ろうとしていることによって、メキシコ国民やビジネスパーソンによるアメリカの評判は下がっているだろう。

◆知るための窓
 我々が最近発表した研究(オックスフォード大学Center for Corporate Reputation が一部支援)では、評判などの実体のないものがどう実体のある結果を引き起こしているかを知るための窓を提供している。

 我々は、アンホルトGfK国家ブランド指数を用いて国家評判を測った。国家ブランド指数は、20カ国からの2万人に及ぶ回答者を元にした調査である。我々は、データが公的にアクセス可能な直近の調査である2008年の結果を用いた。回答者は、調査対象である他の19カ国及び対象外である30カ国を評価する。よって、評価国・被評価国の国家ペア(ドイツ人によるカナダの評価、ブラジル人によるドイツの評価、等)による表ができる。

 国家評判の様々な側面を測るために、調査では「国家の生産物の質」と「国民の信頼性」を含んでいる。

 輸出量を把握するために、国連統計部商品貿易統計データベースから各国家ペアのデータを取得した。国家評判の貿易に対する潜在的影響(逆の因果関係ではなく)だけを調査することを明確にするため、評判調査の2年後である2010年の貿易データを用いた。

 輸出データと評判データを結びつけることによって、861国家ペアのデータセットができた(例えば、フランス人によるイタリアの評価と、2年後のフランスへのイタリア輸出量)。

 我々は、経済学における最も成功している経験的モデルの一つと呼ばれている「貿易における重力モデル」を応用して、この国家間関係が世界規模でみられるか試した。

 他の結論を排除するために、各国家の市場規模、地理的距離、共通公式言語の有無などの、国家間貿易を影響するとされている要素も考慮した。

◆どう評判が貿易を影響するか
 我々は、結果に驚いた。

 評判ランキングで1位下がることが2%の輸出量の減少につながっていた。分かりやすい例として、もしアメリカがカナダ人の評判において1位分下がり、その他の条件が変わらないとしたら、それに伴ってカナダへの輸出量が2%減少することが期待できる。この結果を2016年の輸出に当てはめると、50億米ドル(約5,500億円)以上の損失を意味する。

 違う視点から見ると、評判1位分の下落は輸入国が関税を3%上げることに効果がほぼ等しい。アメリカのような輸出大国(毎年約1.5兆米ドル[約170兆円]の輸出額)にとって、評判の下落は何千億もの工業製品の輸出を危機にさらすのである。

 もちろん、この効果は両方向に働く。評判が上がると、それに伴い輸出量が増えることを我々のモデルは予想する。

◆無視をするなら自己責任で
 トランプ政権は輸出を活性化することを優先していて、「国際貿易は経済を発展し、何百万もの職をアメリカに戻し、我が国の苦しんでいるコミュニティを活性化できる」と主張している

 しかし、彼は評判という重要な要素を無視しているようだ。

 我々の研究はあることを明らかにしている:国際的評判を無視している国家は自国を危険にさらしているのだ。もしトランプが輸出を増やすことに真剣なのであれば、アメリカと彼自身の世界的地位を改善することから始めるべきである。

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by Masaru Urano
photo Red ivory/shutterstock.com

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