資本主義は終わりを迎えた?欧米でわき上がる懐疑論 “前進している”という意見も

 欧米では近年、資本主義をめぐる議論が盛り上がっているようだ。2008年のリーマン・ショック後に、富の独占に対する批判が高まったオキュパイ運動や、ギリシャ危機が引き起こした経済的・社会的リスクの増大などから、システムとしての資本主義に対する疑問が起きている。フランスの経済学者トマ・ピケティ氏は著書『21世紀の資本』にて、資本主義では富の再分配がうまくなされず、貧富の差が拡大することを指摘した。そういった中で、資本主義をめぐる反対意見や、逆に資本主義を擁護する意見がメディアでも活発に交わされている。そのなかから最近の意見をいくつか紹介したい。

◆資本主義に懐疑的なガーディアン紙
 資本主義に懐疑的な見方を示しているのが英ガーディアン紙だ。同紙のホームページで「capitalism(資本主義)」のワードで記事検索を行うと、資本主義への否定的な見方を示すヘッドラインが次々と出てくる。

一例として、経済ジャーナリストであるポール・メイソン氏は同紙で、低価格・低賃金に大量の量的緩和を行えば、バブル経済とその崩壊の循環を招くのみで、負債を増大させると指摘する。解決策としてメイソン氏が提案するのは、情報技術の活用だ。労働時間の短縮や情報の共有により、大資本による独占や搾取を防ぐことができる、とメイソン氏は提言する。

 また別の資本主義への再考を促す記事では、政策研究所Tellus Institute副所長のアレン・ホワイト氏が、政財界の有力者も現行の資本主義に対して、新しい形の資本主義の提言を行っていることを紹介。アル・ゴア氏が提案する「持続可能な資本主義」や、ビル・ゲイツ氏の「クリエイティブな資本主義」などだ。ホワイト氏は、企業の業績評価において、金融資本ばかりに注目するのではなく、いかに社会的・人的・環境的資本も豊かにさせているかの評価を取り入れるべきだと提言する。

 ニューヨーク・タイムズ(NYT)紙のコラムニスト、アナンド・ギリダラス氏は、資本主義の問題点について、富裕層は慈善活動により賞賛されているが、その活動資金を生むビジネスの害については、批判の目が向くことはない。また、ビジネスのリスクが労働者に転嫁されており、ビジネスの責任の所在も曖昧になっている、と主張している。

 さらにTED Talksでも、資本主義に再考を促すスピーチが行われている。ヘッジ・ファンド大手の創設者で世界的に著名な投資家であるポール・チューダー・ジョーンズ氏は、資本主義は、貧富の格差と社会問題を増大させるものであり、歴史的にそれを解決してきたのは、革命、高い税金、戦争であると主張する。同氏は、企業活動に公平性(justness)を拡大させることで解決すべきだと述べている。

◆資本主義は衰退ではなく、前進するとの見方
 一方でエコノミスト誌は、資本主義は衰退しているのではなく前進しているのだ、という論を展開している。8月8日に掲載された記事では、「情報技術により資本主義の弊害である大企業の独占や搾取を防ぐことができる」と主張したポール・メイソン氏などの意見に反論。「逆にインターネットにより、資本主義はさらに前進するだろう」と主張する。

 インターネットを通じて自宅の空き部屋を貸すAirbnbや、自作を売るEtsyなどのサービスは、確かに価格破壊や現在のビジネスモデルの破壊を引き起こすものかもしれない。しかし、こういった「新経済」の下でも、人々はステータス・シンボルとなるような高級時計やスポーツ・カーに大枚を払うのをいとわない、と同記事は指摘する。

 また企業に就職せず、自分でビジネスを起こす人や、自分の専門スキルを活用して働く人が多くなると予測。そのため市場では、今、何が求められているのかなど、より経済の動きに敏感になると指摘。企業年金や退職金に頼ることがなくなるため、結果として貯蓄や投資への関心が高まり、さらに市場の動きに敏感になる、としている。

 そういった人々にとって、政府の規制強化や収入への高い課税は歓迎されるものではなく、経済においては自由主義的な考えに傾くのでは、と述べている。

 ニューヨーク・タイムズ(NYT)紙の論説コラムニスト、デイビッド・ブルックス氏は、「資本主義は、多様な才能を競わせ、市場に沿ってその才能を社会にうまく組み合わせるものであり、実際にさまざまな国で貧困が減り、技術的なイノベーションを創り出している」として、資本主義を擁護している。

 また、政府の経済活動へのコントロールに反対の意を示す。同氏は、政府による企業統治や投資の関与の実例として、ヒラリー・クリントン氏が提案する新しい税制案を挙げ、この案は政府が投資の適当なタイミングを計れるという前提のもとに立っているが、有能な専門家が寄り集まったとしても経済といった複雑なシステムを計画することはできないし、社会のリソースをうまく分配できるわけではない、と反対理由を述べている。

Text by 阿津坂光子