アベノミクスは期待外れ? 構造改革、賃上げの進捗に海外から懸念と期待

 安倍晋三首相が政権について以来、様々な経済施策が実行され、株価が急上昇し、バブル崩壊以来の好景気に市場は沸いた。しかし、現在アベノミクスには停滞感がある。

【日本の低成長に失望】
 4月の消費税8%引き上げ以降、低成長に悩む日本に対する海外の目は厳しい。21日に閉幕した主要20ヶ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議において、アメリカのジャック・ルー財務長官は「日本の成長には失望させられている」と述べた。

『The Diplomat』は「アベノミクスは世界の期待に応えられないのか?」という見出しの記事で、大胆な金融緩和や公共事業が実行されているにもかかわらず経済が停滞している日本に対し、懸念を表明している。日本は自国経済を刺激するための努力を十分に払っていない、とアメリカは見ているというのだ。

【賃上げが物価上昇に追い付いていない】
 これに対し、安倍首相は、19日付のウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙で、アベノミクスの失敗を警戒する根拠はないと反論している。

 アベノミクス第3の矢である「構造改革」は行き詰まり、賃上げは物価上昇に追いついていないと指摘する人たちもいる。しかし、大企業や、中小企業の3分の2近くが賃金を引き上げた、と首相は主張している。また、就業者数の増加で給与総額は2013年4月以降、上昇基調にあり、7月の給与総額は前年同月比3%強増加した、とも述べている。

 一方、テレグラフ紙は、日本経済の屋台骨である中小企業は、未だに2008年の金融危機の傷が癒えていない、と指摘している。中小企業の社員は長時間労働と上がらない賃金に甘んじている、とみている。

【イノベーション投資により経済不況脱出へ】
 同紙は、独自の創造性と技術で経済不況を乗り切っている企業もあるとして、大田区のアルミ材料販売・マシニング加工会社マテリアルを紹介している。同社は、過去数年間、32人の社員全ての賃金を上げることができた。技術力を活かして品質の高い製品を創造してきたと語られている。

 東京大学の吉川洋経済学教授は、イノベーションへの投資が不況脱出に必要と語る。同教授は「政府が健康福祉サービスの分野に率先し、新しい製品やサービスを作り出す機会を開くべき」と述べたという(同紙)。

 アベノミクス成功のカギは何か、人口減少が続く日本で、安心して子供を生み育てることができ、長期間に渡り成長を生み出す経済政策が必要、と同紙は結んでいる。

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Text by NewSphere 編集部