日本企業トップら200人が訪中…過去最大 締め付け強化への危機感か?

 日本企業のトップらで作る日中経済協会(会長・張富士夫トヨタ自動車名誉会長)のメンバーが、27日までの日程で中国を訪問している。日中の経済関係強化を目的とする同会の訪中は1975年以来、毎年恒例だが、今年は過去最大の200人以上が参加した。ロイター、AFPなどの海外メディアもこれを伝えている。

 一方、中国当局は現在、海外自動車メーカーに対する独占禁止法違反の調査を徹底し、交換部品の価格などの締め付けを強化している。トヨタ、ホンダ、日産などの日本企業も大きな影響を受けているこの問題について、中国側の狙いをフォーブス誌が分析している。

【中国政府の経済トップは日本の直接投資激減を懸念】
 日中経済協会の訪中団は、22日に北京に到着。23日には高虎城商務部長(経済産業相に相当)らに面会した。記者会見した同協会の担当者によると、高商務部長は、尖閣問題などで冷えきった政治的な関係が両国の経済関係まで妨げるのは本意ではないと述べたという。

 これを伝えたロイターによれば、尖閣問題をめぐる大規模な反日デモが行われた2012年以降、日本の中国への直接投資は激減し、今年前半は前年同期比40%減の3008億円まで下がった。高商務部長は、これに強い懸念を示したという。

 訪中団は24日に汪洋副首相に面会する。習近平国家主席と李克強首相にも面会を申し込んでいるが、ロイターによれば実現を難しいようだ。2000年代には国家主席や首相との会談が行われていたが、2010年代以降は実現していない。訪中団は27日まで、中国政府高官やビジネスリーダーとの意見交換を続ける予定(AFP)。

【独禁法違反で外国企業への締め付けを強化】
 一方、ロイターは日本経済協会の訪中を伝える記事の中で、中国当局が「独占禁止法違反」で国内の外国企業を締め付けている問題にも触れている。

 国家発展改革委員会(経済のマクロ調整機関)は先月、不当な価格設定をしたとして、日本の自動車部品メーカー10社に計約200億円の罰金を課した。さらに今月11日には、独フォルクスワーゲンと伊・米フィアットクライスラーの販売会社が、新車価格を高く設定して消費者に不利益を与えたとして、それぞれ約42億円、5億4000万円の罰金の支払いを命じられている。また、同委員会は最近、レクサス関連の交換パーツの価格や流通の実態について聞き取り調査をするため、トヨタの重役を呼び出したという。

 中国は、2008年に独禁法を施行し、2013年から韓国サムソン電子や仏ダノンなどの外国企業に対して運用を本格化している。そして現在は、自動車関連メーカーがターゲットになっているとロイターは指摘する。各国政府やビジネス界からは「外国企業がアンフェアに狙い撃ちされている」と不満の声が上がっていると記している。

【自動車部品価格の締め付けはEUに合わせるため?】
 独禁法の運用を厳格化する中国の狙いについて、フォーブス誌は、特に自動車部品価格に関して分析したオピニオン記事を掲載している。それによれば、直近の調査対象は日本のトヨタ、ホンダ、日産で、トヨタとホンダの現地法人は現在、それに対処する形で交換部品の値下げを検討しているという。

 同誌は、「国家機関が企業に製品価格を下げることを強制するのは、自由経済の常識では受け入れがたいことかもしれない」と記す。その一方で、特に自動車部品にはメーカーの「純正部品」と社外品の「アフターパーツ」の価格差という、特殊な事情があるとして、中国当局の動きに一定の理解も示している。

 記事によれば、EUでは「自動車メーカーは、下請けや独立系のパーツメーカーが自社ブランドで純正部品と同等の製品を売ることを妨げてはならない」など、自由競争を促すためのさまざまなルールを設けている。その結果、消費者は「しばしば非常に高額な」純正部品以外の選択肢も与えられ、結果的に自動車部品全体の価格が抑えられているという。同誌は、「見方の一つ」と断りつつ、中国は今、高額な自動車維持費に対する国民の不満を抑えるため、「EUのやり方に合わせようとしているのではないか」と論じている。

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Text by NewSphere 編集部