経済低迷EUは「日本に学べ」 アベノミクス改革の方向性を米誌が評価

 ヨーロッパ経済が低迷を続ける中、海外識者の間では日本の不況との類似点を指摘する声が上がっている。「日本のようになりたくなければ、同じ過ち繰り返さなければ良い」(タイム誌)など、日本を反面教師に名指しする論説も目立ち始めている。

【忍び寄る日本型デフレの影】
 ユーロ圏のGDPは2009年から2013年にかけて減少し、国際通貨基金は2019年までの成長率は1.5%程度に留まると予想している。対して、日本は1992年から2002年の間にGDPが2%以上増加したのは2回だけで、2回の減少も記録している(タイム誌)。同誌は、問題はむしろその「失われた10年」が、デフレスパイラルによって「失われた20年」になったことだとし、ヨーロッパはその過ちを繰り返してはならないと警告している。

 経済専門のクラウドソース・コンテンツ『Seeking Alpha』は、日本の低迷の主要因はバブル崩壊であり、それに伴う政府・銀行の対応の遅さがデフレにつながったと指摘する。一方、ユーロ圏では、EUの設立そのものによる末端金利の低下とそれに伴って発生したアイルランド・スペインの資産バブル、ギリシャ危機などが複雑に絡み合い、現在の状況に至ったとしている。そして、最近ではユーロ圏のインフレ率が0.4%に留まる(欧州中央銀行の推奨値は2%)などデフレ要因が増しており、「非常に日本に似てきた」と危惧する。

 タイム誌も同様の見解だ。「現在の欧州各国の低成長は個人消費の冷え込みや銀行の貸し渋り、企業が自国投資を抑制することにつながる。ヨーロッパが日本と同じ罠にはまるのは一目瞭然だ」と記す。また、少子高齢化など背景にある社会的要因も似通っているが、高い失業率など日本よりも悪い要素もあるとしている。そして、内需の冷え込みにより、ヨーロッパも近い将来、現在の日本と同じく輸出に大幅に依存しなければならなくなると記している。

【日本の最大の過ちは構造改革の失敗】
 カタール英字紙『ガルフ・タイムズ』に寄稿したドイツのエコノミスト、ミヒャエル・ハイゼ氏は、日本が犯した最大の過ちは構造改革に失敗したことだと見ている。同氏は既得権益層を中心とした抵抗勢力の力が強い「難しい政治環境」がその要因だとし、「大きな支持率を得ている安倍政権ですら、農業や労働市場の改革では苦労している」と記している。

 タイム誌も改革への激しい抵抗が「日本を本当に殺した要因」だと指摘する。2000年代初めの小泉改革による規制緩和の流れの一方で、「日本の政治家たちは政治的にデリケートな改革のほとんどを避けてきた」と批判。ヨーロッパでは日本よりはわずかに進んでいるものの、ユーロ圏内の統一的な規制緩和など、手付かずの基本的な改革も多くあると記している。

 【日本の失敗に学べ】
 ハイゼ氏は、日本の失敗に学べることがヨーロッパのアドバンテージだと述べる。特に金融政策では主に反面教師的な意味で日本に学ぶべきことが多いと論じる。

 一方、日本の前例を見れば、金融政策だけでは成長を促すことはできないというのが、タイム誌の主張だ。その上で「安倍首相もようやくそのことを理解したようだ」と、安倍内閣が掲げる労働市場の規制緩和、各業界の過度な規制の撤廃、女性の労働環境の向上などの構造改革案を挙げる。そして、「これらは効果が小さく、遅すぎるかもしれない。しかし、ヨーロッパのリーダーたちは安倍首相の足跡を追わなければならない」と記している。

欧州リスク: 日本化・円化・日銀化

Text by NewSphere 編集部