日中韓FTA交渉開始 各紙は背景と今後の展開をどう分析したか?

日中韓FTA交渉開始 各紙は背景と今後の展開をどう分析したか? 日本、中国、韓国3ヶ国間の自由貿易協定(FTA)締結に向けた交渉の第1回会合が、3月26日、ソウルで始まった。今回の交渉は28日まで3日間、全体の枠組みに加えて、投資のルールやサービスの自由化など分野ごとにも進められるという。
 2012年11月に日中韓の貿易担当相が会談し、交渉開始を宣言していた。3ヶ国間のFTAが実現すれば、GDPで世界全体の約2割(約14兆ドル)を占める巨大な経済圏となり、これはNAFTA、EUに次ぐ規模である。 
 日本各紙(朝日・読売・産経)は、各国の思惑と今後の展開予測を報じた。

【交渉進展の背景】
 2012年、尖閣諸島問題・竹島問題で日中・日韓関係が必ずしも良好とはいえない中、3ヶ国間のFTA交渉が本格化した背景には、日本のTPP交渉への参加があると各紙は指摘する(安倍首相が正式に参加を表明したのは3月だが、菅元首相は2010年に参加の基本方針を発表していた)。読売新聞は、これまでは歴史的背景を理由に経済連携が進まなかった、という専門家の分析を掲載した。朝日新聞は、日本がTPPへの参加を検討する中で、中国の態度が変化していった理由を、“アジアの経済圏で米国が主導して貿易や投資のルールがつくられるのを警戒したため”と分析した。実際、茂木経済産業相は26日の閣議後記者会見で、「TPP交渉参加の決断が良い弾みになった」と述べている。

【日本のメリットとリスク】
 日本の貿易総額(輸出入合計)は、中国が1位、韓国が4位である。読売新聞によると、日中韓FTAが実現し、関税の相互撤廃が進めば、日本は自動車や鉄鋼などの輸出増が期待できるという。さらに同紙は、中韓で横行する模倣品の被害や、中国進出時の日本企業への技術移転強要なども防げるのではと報じている。GDPの押し上げ効果は、日本が0.74%。中国は2.27%、韓国は4.53%との試算もある。
 ただし、中韓両国は農産品の大幅な市場開放を要求する可能性が高く、協議が難航する可能性もあると産経新聞は指摘する。
また朝日新聞は、日本をライバル視する韓国が、中国とのFTA交渉を別途進めていることを紹介。韓国企業が日本企業に先んじることをねらい、日中韓FTA交渉を遅らせたいという思惑もあるのではと懸念している。

 日中韓のFTA交渉は、年内にあと2回予定されている。2、3年後の妥結を目指しているという。読売新聞は、今後の展開としては、中国・韓国は、自動車の関税維持を図る可能性が高いと予測。一方、知財保護や投資ルールの明確化では、日韓が中国に実行を迫る構図となりそうだと分析している。
 日本は、TPP、EUとの経済連携協定(EPA)、東アジア16ヶ国が参加する包括的経済連携協定(RCEP)の交渉を同時並行で進めることになる。各紙は、様々な交渉への参加を通じて日本が交渉力を強化し、日中韓FTAにおいて、どこまで自国の利益を確保できるかが焦点となるとみている。

Text by NewSphere 編集部