「主権回復の日」式典開催 日本各紙の論じ方の違いとは

 政府は28日、「主権回復・国際社会復帰を記念する式典」を、憲政記念館で開いた。1952年の4月28日、サンフランシスコ講和条約が発効し、日本は独立を果たしたことを記念しての式典。天皇、皇后両陛下も臨席された。
 安倍首相は「これまでたどった足跡に思いを致しながら、未来へ向かって希望と決意を新たにする日にしたい」と述べた。
 なお、沖縄県は1972年まで米施政権下に置かれ、28日は「屈辱の日」と呼ばれる。仲井真知事は欠席し、高良倉吉副知事が代理出席した。
 日本各紙(朝日・読売・産経)は、「主権回復の日」をめぐり、それぞれの視点から課題を論じている。

【歴史と現状認識】
 各紙は、日本が独立を果たし、国際社会の責任ある一員になると誓った日を記念すること自体は、意義があると述べている。

 朝日新聞は、ドイツにならい“左右の立場の違いを超えて総括”する節目として意義があるとみている。式典開催を求めてきた自民党の野田氏の主張に賛同する形で記載している。ただし、占領期を「屈辱の歴史」と考え、過去の過ちを否定するような政治家の言動は危険だと主張。安倍首相の侵略戦争を否定するような答弁、憲法改正の動き、国会議員168人の靖国神社参拝など、“国際社会の疑念を招く”行動を危惧している。
 産経新聞は、北朝鮮による拉致被害者の全員帰国、北方領土と竹島の返還がなければ、“真の主権回復はない”と断じた。さらに、中国の尖閣諸島奪取をねらう動きに言及し、戦後の憲法で軽視されてきた「国家主権」(自国の意思で国民や領土を統治する国家の権利)が脅かされている、と警鐘を鳴らしている。
 読売新聞は、国の予算・法律や言論をGHQが統制した歴史が“忘れ去られようとしている”と懸念し、国際感覚を失った指導者たちによる戦争がそうした事態を招いたことなど、改めて見つめ直すべきと主張する。また産経新聞同様、北方領土や竹島、尖閣などの現状は“今もなお、日本の主権を揺さぶっている”と危機感をあらわにした。

【対沖縄姿勢】
 安倍首相は式辞で、 “私は若い世代の人々に特に呼び掛けつつ、沖縄が経てきた辛苦に、ただ深く思いを寄せる努力をなすべきだということを訴えようと思います”と述べた。各紙の沖縄に対する論調には温度差が見られる。

 読売新聞は、沖縄県の高良副知事が「首相は比較的、沖縄の問題に向き合って発言された」と一定の理解を示したことを取り上げている。沖縄返還が実現したのは、日本が主権を回復して米国と交渉できたからだとも述べており、式典を評価する立場から論じているといえる。
 産経新聞も、沖縄県内は反対一色ではないと報じた。また、米国施政権下でも潜在主権が認められたことは重要な事実だと述べている。
 一方朝日新聞は、沖縄の式典抗議集会に1万人が参加したことを報じた。こうした断絶を招いたのは、本土の主権回復後、沖縄では土地接収で米軍基地が造られ、普天間の辺野古移設やオスプレイ配備が強引に進められていることに原因があるとの論調だ。安倍首相は、辺野古案の取り下げや日米地位協定の改正に取り組むべきと主張している。

Text by NewSphere 編集部