参院選「違憲状態」判決-見えない改革の道筋-

国会 最高裁は17日、「1票の格差」が最大5倍だった2010年の参院選は違憲状態だったと判決を下した。15人の裁判官のうち12人の意見で、残る3人はより厳しい「違憲」判断を示した。「選挙無効」の訴えは棄却した。なお、最高裁は、2009年の衆院選についても「違憲状態」と判断している。
 各紙ともに、参院の選挙区制度の構造的問題であり、抜本的な改革の必要性を主張している。

 朝日新聞は、この状態を放置してきた国会の責任は重いと批判し、改革を急げと唱えた。
 まず、参院議員は都道府県代表のような性格だったことや、権力分立の観点から、最高裁がこれまで1票の格差に寛容だったと一定の理解を示した。しかし、それを理由に投票権の不平等を無視することは許されないと主張。改革の進まない状況に最高裁がしびれを切らし、選挙制度の見直しに踏み込んだ判決が出てきたと背景を分析している。さらに、各党が一時しのぎの定数是正案に合意したものの、衆院で継続審議となってしまっている現状は、保身優先に映り国民の政治不信を深めると非難。
 そのうえで、朝日新聞の持論である有識者諮問機関による改革案策定を主張した。最後に、参院の役割・権能は何か、衆院との関係はどうあるべきか、といった論点を踏まえて選挙制度を設計することが重要だと主張した。

 読売新聞は、まずは定数是正案の検討、そして抜本的な制度改革、というステップを提示した。短期的には、次回選挙に間に合うよう早急に臨時国会を開催すべきと主張している。
 まず、最高裁の判決が、「現行制度下での格差解消は著しく困難」と指摘した点に注目。先日与野党が合意した、定数の「4増4減」案は、もし成立しても違憲状態は解消されないと悲観的にみている。このまま次回選挙をむかえれば、より踏み込んだ「違憲・一部選挙無効」判決も出かねないと警告した(なお、選挙無効判決が出たことはまだない)。現在の都道府県単位からブロック制に移行するなどの具体案も提示している。

 産経新聞は、臨時国会での定数是正法案成立と、抜本改革への取り組み開始を求めた。
 改選対象議員の任期が7月までであることから、それまでの制度改革は困難という認識を示した。判決が「違憲状態」にとどまったのも、定数是正の検討が進んでいるからだと評価し、これの実現を主張した。なお、「4増4減」案が実現すると、最大5倍の格差は4.75倍に縮まる。他紙に比べると定数是正の取り組みへの評価が高く、衆院の「0増5減案」も妥当だとしている。ただ最終的には抜本改革が必要であり、政治不信を脱却するためにも、二院制のあり方など憲法上の問題も含めて議論すべきと主張した。

朝日新聞
定数判決―参院のあり方論ずる時(10月18日)

読売新聞
参院1票の格差 抜本改革へ最高裁の強い警告(10月18日付・読売社説)

産経新聞
「違憲状態」判決 衆参とも急ぎ格差是正を(10月18日)

<参考リンク>
1票の格差「違憲状態」を脱却する思考実験をしてみる(参議院選挙区)

(木走正水)

Text by NewSphere 編集部