なぜグロースハッカーの年収は2000万を超える?シリコンバレーで最もホットなキャリア

 グロースハッカーは、企業やサービスが急成長する為に、ユーザーの流入、登録内容、離脱率などのデータ解析を行う。マーケッターと目指すところは同じであるが、グロースハッカーはエンジニアとしてのキャリアを持ち合わせている。マーケティングの観点で仮説を立てた後に、自らがコードを書いて実証することから、「ユーザー獲得エンジニア」とも呼ばれている。

 多種多様なモノやサービスで溢れているような現代社会では、競合と戦い生き残ることは至難なことである。自社と顧客の関係性を分析し、見合った戦略を打ち立てていくグロースハッカーの需要は今後、さらに見込まれることが予測される。

◆WEBサービス支援から、大統領選挙まで行き渡るグロースハッカーの仕事
 グロースハッカーに注目が集まったのは、2012年の大統領選挙である。オバマ氏と対立した、共和党ミット・ロムニー候補は、当時24歳であったアーロン・ジーンを招集した。グロースハッカーである。

 アーロン氏が主導したマーケティングは、WEBサイトやメール、あるいはソーシャルメディアを駆使したものだった。ただ広告を打つのではなく、有権者に対してABテストを行い、データを分析し、バナーのサイズや色の変更をはじめとする微調整を徹底的に行った。結果として、ロムニー候補は約140億円もの個人献金を集めることに成功したのである。

 クラウド上におけるストレージサービスを提供するサービスで、有名なDropboxも、このグロースハッカーの恩恵を授かっている。Dropboxはフェイスブックやツイッターのアカウントからのログインを可能にし、また友人招待を活発にするといった施策でユーザーを獲得してきた。日本でも、クックパッドやZaimなどがグロースハッカーの技によって成功を収めていることは有名である。

◆グロースハッカーは、なぜ年収2000万を超えるのか
 グロースハッカーを求人として募集する企業は、日本でも増えてきている。ユーザー獲得という使命は、マーケッターと変わらないものの、グロースハッカーが高給である理由は2点ある。

 まず、コストパフォーマンスにあると考えられる。通常、ユーザー獲得の手段では、マーケッターの給料だけではなく、広告費やマーケティング予算が含まれる。一方、グロースハッカーの役割は、「広告費やマーケティング予算を一切かけることなく、ユーザー獲得を行う」ことである。無料で配布されている分析ツールや、ソーシャルメディアを活用して、ユーザーのエンゲージメントを高めるのである。つまり、この省かれたコストの分だけコストパフォーマンスが良いことがいえる。

 もう一点は、グロースハッカーになる為の具体的なスキルが問われる点である。従来は商品開発とマーケティングは分けられていたが、ユーザー獲得を重視していく上で、必要であればグロースハッカーが開発に参画することもある。したがって、グロースハッカーとしてキャリアの手を挙げる為には、デザインや開発などの経験が必要であるともいえる。スキル所持者を雇うことは、成果が担保されることにも繋がる。企業は急成長の可能性と、データを用いて確実に伸びるという担保の両方を買うことができるのである。

◆グロースハッカー哲学から学ぶ「AARRR」明日からの事法
 コストをかけずに、生産性を上げる人材は、グロースハッカーに限らず、いかなる場面においても重要視される存在となりうる。そんなグロースハッカーの哲学は「AARRR」にあるとされている。順番に、Acquisition(獲得)、Activation(活性化)、Retention(継続性)、Referral(紹介)、Revenue(収益)となる。

 これは、まずユーザーに自社サービスとの接点を持ってもらい(獲得)、サービスを使ってもらい(活性化)、またサービスに何度も使ってもらえる仕組みを作り(継続性)、これをユーザー自らがサービスを広めてくれ(紹介)、最後に料金が発生する体制に持ち込む(収益)といった流れである。この流れは、サービスを成長させていく場合に限らず、営業で自社の顧客を増やしていく、売上を増やしていくような場合においても、適用することができると考えられる。

 グロースハッカーに例を見るように、やり方次第ではコストをかけることなく、市場で成功することができる。これからの時代において意識すべきは、必要とされる人材は「限られたリソースを有効活用する」のではなく、「何もない地点から成果をあげる」ことができるクリエイティブな人材であるということだ。

Text by 山田俊輔