エルメス、特に日本での売上が好調 一人勝ちの理由を海外メディアが分析

 フランスの高級ブランド、エルメス・インターナショナルの売上が好調で、特に日本での伸びが顕著だったようだ。日本で売上が伸びた理由は、日本の景気回復……ではなく中国人観光客。その背景説明と、その中でもエルメスが一人勝ちしている状況についての分析を海外メディアが行っている。

◆中国の富裕層は香港から日本へ
 エルメス・インターナショナルが発表した第2四半期(4−6月)の売上高は、前年同期比で22%の増加。日本での売上高は、第1四半期(1月−3月)の前年同期比15%増からさらに増加して、27%増。かなりの好調さが窺える。

 その理由についてエルメスは、今まで中国本土からの観光客が目的地として真っ先に香港を選んでいたのが、最近では日本が好まれるようになったからだと見ている。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は、香港を訪れる中国観光客の減少の原因として、2014年に起きた香港の反政府デモと、ビザ発給に対する規制が強化されたためだとしている。実際、今年の5月のデータでは、香港に一晩以上滞在する本土からの訪問者数が3.2%減少していると同紙は伝えている。ブルームバーグは、中国本土の富裕層が格安品目当ての客が激増した香港を嫌ったためとしている。

◆好調のエルメス、苦戦の他ブランド
 エルメスが好調だった理由として、WSJはユーロ安を挙げている。そのため、日本を除いたアジア圏でも28%の伸びを示した。しかしながら、結局は為替変動の影響を差し引けば、6%の伸びにしかなっていない。エルメスは、利益率は「2014年上半期との比較ではわずかに減少する」との見方を示したことをWSJもブルームバーグも伝えている。

 だが、いくらユーロ安だとはいえ、ほかの高級ブランドは苦戦を強いられているようだ。その例として、WSJは、バーバリー・グループの香港の既存店売上が、2桁の伸びから鈍化していることを伝え、ブルームバーグは、高級腕時計の代名詞とも言えるスイス時計の香港への輸出が6月には21%減少していることを挙げた。

 さらに、フィナンシャル・タイムズ紙(FT)の記事では、プラダが2011年に香港に進出して以来初めて年間純利益が減少したことや、ルイ・ヴィトンやクリスチャン・ディオールの中国での需要が下がってきていることを伝えている。

 この理由として3社とも、中国の経済成長の鈍化と習近平主席による反汚職取り締まりの強化を挙げている。

◆時代の潮流にエルメスの戦略がフィット
 では、なぜエルメスは高級ブランドの中でも、一人勝ちの状況なのか。FTの分析によれば、次の3点が理由として挙げられている。

1.簡単には手に入らない
エルメスは、最も人気の高い商品には順番待ちリストがあり、簡単には手に入らせないようにしている。このことによって、役人や上司への手軽な贈答品や賄賂には不向きになっているとFT紙は述べているが、中国による反汚職キャンペーンの影響が少ないことを示唆している。

2.好みの変化
エルメスのバッグは、洗練されたテイストが特徴だ。昨今の好みはハデ好みからシブ好みに移行しているようで、時代を謳歌したグッチやルイ・ヴィトンが一時の勢いを失っているのはそのためのようだ。

3.現地のテイストに合わせる
伝統とフランスらしさを前面に押し出しているエルメス。一方で、中国のデザインを取り入れた高級ブランド「Shang Xia(上下)」を中国で展開させている。

Text by 阿津坂光子