ソフトバンク、韓国ECサイトに1240億円出資 Amazonにも負けない先進性に注目

 ソフトバンクは3日、韓国のEコマース(電子商取引)サイト「クーパン」を運営するフォワード・ベンチャーズ社に、子会社を通じて10億ドル(1240億円)を出資すると発表した。ソフトバンクがアジアのインターネット企業に行っている一連の投資の中でも最大規模のものとなる。

◆自社による「当日配送」などに将来性を見出す
 ブルームバーグによれば、今回の10億ドルの投資に伴うフォワード・ベンチャーズ社の企業価値は50億ドルとなる見込みだ。取引は7月上旬に完了する予定。フォーブス誌は、これにより同社は「Uber、フェイスブック、アリババなどの一握りのインターネット大手の仲間入りをする」としている。

 韓国には、世界最大手のAmazonが進出していない。「クーパン」は、その中で急成長を遂げている。ネット通販事業を始めた当初は、おむつなどのベビー用品の販売で主婦層の支持を得たという。Amazonなどの先駆者・同業他社との最大の違いは、受注から配送まで一貫して自社で行っている事だ。昨年から『Coupang』のロゴ入りのトラックを自社のドライバーが運転して商品を届けるシステムを採用し、当日配送(ソウル地区からの午前中に注文の場合)を実現した。飴や試供品を同梱する景品サービスも展開しており、この半年の月間売上は約3倍に伸びているという。モバイル端末からの注文が多いのも特徴で、Amazonが60%程度なのに対し、クーパンは75%だという(テクノロジー情報サイト『Tech Crunch』)。

 ソフトバンクは、これらの点に先進性を見出し、投資を決めたとしている。交渉を主導したのは、世界戦略を強化するために昨年、米グーグル社から引き抜いたニケシュ・アローラ副会長だ。同氏は、「クーパンは、世界で最も急成長し、破壊的な影響力を持つインターネット企業の一つだ。その革新的な当日配送、モバイル・コマース、顧客サービスなどにより、これからの世界のEコマースがあるべき新たなスタンダードを作り上げようとしている」と声明で述べている。

◆SBのアジア戦略の一環
 ソフトバンクはアローラ氏の就任と共に、昨年来、アジアのインターネット企業に続けざまに投資している。筆頭株主になっている中国Eコマース大手、アリババの上場で8兆円ともされる巨額な含み益を得た後、10月にはオンライン・マーケットプレイス『Tokopedia』(インドネシア)に1億ドル、『Snapdeal』(インド)に6億2700万ドルを出資した。また、タクシー配車アプリ業界への投資にも熱心で、中国とインドの企業にそれぞれ巨額の投資をしている。

 孫正義社長は、クーパンへの出資に際し、次のようにコメントしている。「ソフトバンクは、世界中のインターネット企業に投資し、“情報革命を通じて人々の生活に寄与する”というビジョンを共有する起業家を支援することで、共に成長することを目指している」

 一方のクーパンは、ソフトバンクの他にも、昨年、米ベンチャーキャピタルのセコイア社から1億ドル、米資産運用会社のブラックロックから3億ドルの出資を受けている(『Tech Crunch』)。

◆クーパンCEOは学生時代から孫社長を尊敬
 フォーブスは、今回の出資について、主にクーパンサイドから見た記事を掲載している。それによれば、創業者のボム・キムCEOは、孫社長を尊敬し、起業家として目標にしているという。ハーバード大学在学中から孫社長とメール交換をして様々なアドバイスを受けていたようだ。今も「長期的な展望で投資する非常に視野の広い投資家」と尊敬の念を示す。

 キム氏は、2010年に大学を中退し、クーパンを設立。当初は『グルーポン』のようなクーポンサイトで、名称にもそれが表れている。やがて現在のようなEコマースサイトに変貌していくが、その過程では、米・シアトルに拠点を開設してAmazonのスタッフを引き抜くといった戦略も取ったという。同氏は、今回の投資による潤沢な資金を使い、配送システムやモバイルアプリをさらに強化していくとしている。

 Amazonが今年中に韓国に進出するという噂もある。キム氏は米スーパー・ウォルマートが韓国進出に失敗し、マクドナルドやグーグルも苦戦している事を例に出し、国内の「ローカル・プレイヤー」の強さに自信を見せる。そして、「我々はグローバルな考えを持っている。しかし、韓国に集中している」と、当面は海外進出をしない考えを『Tech Crunch』に示している。

Text by NewSphere 編集部