富士フイルム、エボラ出血熱対策で抗インフル剤増産 海外メディアも効果に注目

 富士フイルムは20日、抗インフルエンザウイルス薬「アビガン®錠200mg」(一般名ファビピラビル、以下アビガン)を11月中旬から追加生産すると発表した。アビガンのエボラ出血熱に対する効果が期待されているためだ。

 同社によると、11月中旬よりフランス政府とギニア政府が、ギニアでエボラ出血熱に対するアビガンの臨床試験を始める予定だ。本臨床試験で、アビガンのエボラ出血熱に対する効果並びに安全性が認められた場合は、より大規模な出荷要請が見込まれる。

◆マウス実験でも効果確認
 年初から西アフリカで爆発的に感染が拡大しているエボラ出血熱であるが、ワクチンや特定の治療薬が存在しない。流行拡大を防ぐため、世界保健機構(WHO)は8月、実験段階の薬剤(未承認薬)の投与を容認したが、未承認薬の在庫は限られている、とAFPは指摘している。

 アビガンは、富士フイルムのグループ会社である富山化学工業が開発し、2014年3月に薬事承認を取得した、抗インフルエンザウイルス薬である。西アフリカからヨーロッパに緊急搬送されたエボラ出血熱患者複数人に対し、緊急対応として投与された。アビガンを含む複数の未承認薬が投与されたフランス人看護師は無事治癒し、退院している。

 富士フイルムによると、アビガンがエボラウイルスに対して抗ウイルス効果を有するとのマウス実験の結果が公表されている。アビガンは、ウイルスの細胞内での遺伝子複製を阻害することで増殖を防ぐ働きをする、とウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は指摘している。

◆感染拡大に備える
 富士フイルムは、現時点で2万人分のアビガン錠剤を有し、原薬としてさらに30万人分程度の在庫を保有している、とWSJは報じている。

 同社は、「感染規模がさらに拡大した場合においても十分な量を継続的に供給可能とするため」、アビガンの追加生産に踏み切った。しかし、同社がアビガンの在庫を最終的にどれほど増やすかについては明らかではない、とAFPは指摘している。

◆アビガン増産に市場歓迎
 アビガンには、エボラ熱治療薬としての期待が寄せられている。エボラ熱治療のため未承認薬剤が容認された8月から2ヶ月で、富士フイルムの株価は約30%上昇した。10月7日には、過去6年間の最高値3,800円を記録した。

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Text by NewSphere 編集部