ソニー、クラウドテレビに番組配信へ 好調PS4が成功の鍵、と英紙指摘

 ソニーと米バイアコム(Viacom)社は9月10日、ソニーが計画する米国でのクラウドサービスによるテレビ配信において合意し、バイアコムがコンテンツ提供で協力する運びとなったと発表した。

【バイアコム(Viacom)社とは】
 バイアコムは米国大手のメディアグループ。MTVをはじめとするケーブルテレビ向けチャンネル事業、およびパラマウント映画を傘下に持つ。若者向けのコンテンツを豊富に持つことが特徴として挙げられる。今回の契約により提供する番組は、「Comedy Central」、「MTV」、「Nickeledeon」など22社のテレビネットワークが含まれる。

【ソニーの巻き返しをめざした戦略】
 ソニーはPS4の人気により第1四半期に利益を回復したが、前年は13億ドルの赤字を計上した。英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)はソニーについて「強気の経営戦略を立てながら、それを実現できずにいる」と厳しい見方を示している一方、今回の事業戦略は平井一夫CEOにとって今後の回復への礎石となる、と評価している。また、同紙は「ソニーはPC部門を売却、これまでも重点的に開発を進めてきたゲーム部門を活用し、テレビ部門に重点を移した」と見ている。

 今回の合意により、バイアコムは前述したテレビコンテンツをソニーに提供。さらにすべてのオンデマンド型ビデオも供与する。ソニーは、ゲーム機、テレビ、Android端末など全米に7000万台以上ある同社のネット接続機器を活用してクラウドテレビサービスを開始する。これが実現すればソニーはライブ、オンデマンド、映画などの番組を包括的に提供することが可能になる。

【ソニーの戦略の評価】
 今回のソニーの戦略についての海外メディアの評価は分かれる。
 
 FTは「テレビ離れが進む若者に対し、より創造的な配信が可能になる」と評価し、「プレイステーションを利用したインターネットによるテレビ配信が成功すれば、長期の安定化に役立つ」としている。また「失うものはほとんどなく、得るものは大きい」とのアナリストの声も紹介している。

 フォーブス誌はすべての番組がオンライン上で配信されるのはまだかなり先のことで、評価するには時期尚早であるとの見方だ。若者に関しても、「人気の高いNetflix(米国のオンラインDVDレンタル・映像ストリーミング配信事業会社)やHulu(米国の動画配信事業会社)には料金を払うが、自分の好みではない番組を含むソニー・バイアコムのテレビ配信に料金を支払うかは不明だ」としている。
 
 その一方で、同誌は「ソニーが他よりも早くオンラインサービスを始めることに重要性がある」とし、「ソニーは無料でPS4での配信も可能であり、他のパートナーとも契約を結べば、サービスをよりしっかりしたものにできる」と今後に期待する声も掲載している。

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Text by NewSphere 編集部