イオンモール、カンボジア初進出 国の平均年齢25歳、若年層向け設計が好評価

 カンボジアの首都プノンペンに国内初となる大型商業施設「イオンモール」がオープンした。イオンが約200億円を投じたプロジェクトで、地上5階建て、スーパーマーケットや家電、衣料、映画館、ボウリング場など約190店舗が入居し、そのうち約50店舗が日本ブランドだという。

 プレオープンの段階から毎日5万人以上が訪れ賑わいをみせるモールは現地で話題となっている。首相が国の発展をかけて歓迎する一方、オープンから1週間が経つにつれて課題も浮き彫りになってきたようだ。

【モールの発展は国の発展?!】
 フン・セン首相は6月30日に行われた開催式で、日本企業による大型投資はカンボジアに経済的なポテンシャルがあることが認められた証拠であり、モールビジネスが成功すれば他の外国資本も惹きつけることができるとして歓迎の意と意気込みを表したと地元紙プノンペンポストは報じている。イオンの成功のためにも現地で雇用された2500人の従業員が一生懸命に働き、その他の国民らにもビジネスの足を引っ張るようなストライキを起こさないようにと訴えた。あるショップで働く店員の月給は120ドルとガソリン代20ドル、残業は1時間ごとに1ドルでカンボジアの水準としては悪くないようだ。業績が上がれば給料も上がるはずだと首相はとにかく真面目な勤務を呼びかけている。

 カンボジアは1970~80年代の戦乱のため国内情勢が不安定だったが、近年は政治経済共に安定を取り戻しつつある。また、国民の7割が30代未満、平均年齢が25歳程度という若い人口構成でもあり、今後の消費力の向上が注目されている。平和な社会として投資先に適していることを国際社会にアピールしていきたい反面、モール建設の際の土地の権利を訴えた活動家や労働者、様々な不満要素を抱えた国民からの抗議をいまだに恐れていることがうかがえる。

【需要は未知数!?】
 イオンは20~30代の人々や若い中流階級のファミリー層をターゲットにしおり、価格設定も彼らの購買力に合わせていると地元紙カンボジアデイリーは報じている。バンコクポスト紙などは「買える値段ではあるけれども、他で節約をしなければならない」(23歳)や「他のローカルショップに比べて品質が良いので少し高いけれど購入した」(21歳)、「他のローカルショップのように値段の交渉をする必要がなく、値段もほとんど変わらないので嬉しい」(48歳)という買い物客の声を取り上げている。

 一方で、アナリストはオープン当初は賑わっていても、長期的にみてこれだけ多くの店に見合う需要がカンボジアあるかは分からないとしている。タイの英字紙ネイションでは、アジアには世界でも最大級レベルのモールが集中していると同時に、空きテナント数も世界トップレベルでもあると指摘しているように、モールのオープンとその活気とは別問題だ。

【当面の課題】
 話題のモールとあって大勢が押し寄せているため、駐車場はもちろん、現地に辿り着くまでの道もひどい渋滞に見舞われており、モールに用事がない人々にとっては大迷惑だという。プノンペン市役所は正面エントランス前の道路幅を広げることを検討しているようだが、まだ詳細は明らかにされていない。当面は交通整備の人員を導入するなどして渋滞緩和を試みるという。

 また、実際にモールに入れた人々からも、「レジでの会計に1時間以上待った」「お店が22時までなのにレジが21時で閉まりはじめた」という苦情も多く上がっている。さらには、スリの被害に遭ったという人も少なくなく、現時点ではまだまだ改善の余地があるようだ。

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Text by NewSphere 編集部