味の素 日本独自の“うま味”欧米への浸透狙う 日本食ブームを追い風に

 味の素は、スイスの食品原料メーカー、ワイルド・フレーバーズの買収に名乗りを上げている。ワイルド社は食品・菓子や飲料に使う天然着色料、香料を生産し、飲料メーカー向けなど業務用に強みをもつ。買収額は20億ユーロ(約2800億円)を超えるとみられており、実現すれば味の素にとって過去最大の合併・買収となる。

【買収は重要な手段】
 ワイルド社買収には、アメリカの穀物大手、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランドも入札している。味の素は、フランスの食品成分製造会社ダイアナにも買収提案を行っていたが、ドイツの香料大手シムライズが買収に成功した経緯がある。今回のワイルド社の入札には味の素が勝つのでは、とフィナンシャルタイムズは予想している。

 味の素は現在26カ国・地域に現地法人を持ち、うま味調味料などを販売している。同社の海外進出の歴史は長く、1917年には既にニューヨークに事務所を開設している。味の素にとって、合併・買収は、海外市場開拓の重要な手段である。ブルームバーグによると、欧州あるいは米国で同社事業の効果を高めるのに役立つものがあれば関心を持つ、と味の素の伊藤雅俊社長は語った。

【日本食ブームが後押し】
 ラーメンを始めとする日本食の人気が欧米で高まっており、味の素の海外進出を後押ししている。味の素は、ポートランド州オレゴンの工場を通じ、アメリカにおける売り上げを2倍の200億円にする計画、とブルームバーグは報道している。

 同じくポートランド州で、味の素は、東洋水産と合弁で冷凍麺の製造会社を立ち上げた。2015年に営業開始予定であり、10年以内に6,800トンの冷凍麺を製造する、とアメリカのメディア「Bizjournals」は伝えている。

 ブルームバーグによると、味の素は、ポーランドの生産委託会社に冷凍餃子の設備を供給し、ヨーロッパの冷凍食品の生産拠点として拡大する予定である。

【うま味を世界へ】
 味の素が生産するうま味調味料は、アジアの台所では一般的であるが、欧米ではあまり浸透していない。うま味調味料の主成分であるグルタミン酸ナトリウム(MSG)に対する反感が根強いためだ。スナック製品会社の中には、自社製品にグルタミン酸ナトリウムを含んでいないことを強調するものまである。

 味の素は、5つの味らいの一つであるうま味を刺激する。熟したトマトや母乳などの自然の食品にも、うま味が含まれている。ヨーロッパには“うま味”文化がないので、市場成長の余地がある。「5つの味覚は人類共通」と伊藤社長は語った、とブルームバーグは結んでいる。

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Text by NewSphere 編集部