ホンダの“慣例破り”、アルゼンチンで賞賛 日本ならではの措置に従業員感謝

 アルゼンチンで生産を行っているホンダは、同国の深刻な経済事情から6月9日より7月8日まで操業停止を余儀なくさせられている、とアルゼンチンのタリンガ情報誌が伝えている。

【進出から僅か3年で操業の一時停止】
 2011年にホンダは2億5000万ドルを投資して、それまでブラジルで生産していたモデル「シティ」をアルゼンチンでの生産にシフトした。工場のオープニング・セレモニーにはクリスティーナ・フェルナンデス大統領も参加している。大統領はそのセレモニーでの挨拶で「3月に東北を襲った地震と津波による悲惨な出来事の後にもかかわらず、ホンダがアルゼンチンとの約束を果たしてくれたことに感謝している」と述べたことが、アルゼンチンの紙面「パヒナ12」でも報じられている。

 それから僅か3年経過した今、アルゼンチン・ホンダは生産を停止せねばならなくなったのである。その理由はアルゼンチンが現在抱えている深刻な経済事情からである。

【アルゼンチン・ホンダの歩み 】
 ホンダがアルゼンチンに進出したのは1978年のことである。オートバイの輸入販売がそのスタートである。そして2006年にフロレンシオ・バレラ市にオートバイの生産工場が完成し、2012年には12万台を生産している。2007年にはホンダはアルゼンチンでの自動車の生産を2011年から開始すると発表し、同年5月26日からカンパナ市にてシティの生産がスタートするのである。

【慣例破りの対応】
 今回の操業の中断について、アルゼンチンのバダビア紙は「ホンダはカンパナ市とフロレンシオ・バレラ市にある車とオートバイの工場は止まっているが、多くの他社とは異なり、ホンダは休業に耐えられる限り、全従業員に給与を全額支給すると通知している」と報じている。当地では企業が不振に陥れば経営者は容易に社員を削減したり、解雇したりするのが常とされているが、ホンダは「慣例」に従わなかったのである。

 このことはアルゼンチン国内の多くの紙面が取り上げ、アルゼンチンのイ・プロフェショナル紙は、ホンダのこの寛大な姿勢に驚きをみせ、「政府の報道官カピタニチ氏にも尋ねたが、その回答は得られなかった」と報じている。それ程に、一般的な経営者の姿勢とは相反するホンダの決定に驚き、同社の社員を守る姿勢を高く評価しているのである。

【アルゼンチン自動車業界の強度の不振】
 アルゼンチンを襲っている深刻な経済不況の前にホンダだけが被害を受けているのではない。アルゼンチンの自動車業界は他の業界と同様に強度の販売不振に陥っているのである。同国のラ・グラン・エポカ紙によると「フォルクスワーゲンは15,000台が販売出来ずに工場とディーラの間に溜っている」と報じている。またラ・ナシオン紙は「パーツメーカーのストライキでフォード、プジョー・シトローエン、フォルクスワーゲバーゲンが生産を止めている」と報じている。

 また同国のテリトリオ・デジタル紙によると、5月の自動車の生産は昨年の同月比で36%の落ち込み、輸出も同月比で39.2%減少している。また、1月から5月までの輸出台数は136,957台で昨年の同期間の輸出台数180,890台に比べ24.3%の落ち込みである。

 6月24日に政府は車の販売促進策として、国立銀行が支えになって自動車各社で割り引きをするように要請し、その割り引き額を政府が補填するというプランを発表した。このプランについてアルゼンチン・オート・ブログの記事の中で「発表された自動車各社の中でホンダの割り引き率が13%で最高に目立った。しかし、同社はこの促進策が存在する2ヵ月も前からこの割引を行なっている」と報じ、ホンダの積極的な販売姿勢を称えている。

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Text by NewSphere 編集部