パチンコ“合法化”で2000億円税収増? カジノ合法化に合わせグレーゾーン脱却か

 安倍政権が解禁を目指すカジノ市場について意見交換する国際会議『ジャパン・ゲーミング・コングレス』が14日から16日まで、東京都内で開かれている。カジノの本場、ラスベガスやマカオ、香港から日本市場参入を目論むカジノ運営会社の幹部が集結。日本からはカジノ推進派議員や研究者が参加した。

 一方、従来からの日本の“ギャンブル”であるパチンコは、遊技人口の高齢化などで衰退の一途を辿っている。カジノという強力なライバルの出現で、「グレーゾーン」からの脱却など、生き残りを賭けて業界のあり方そのものを見直すべきだという意見も出始めた。カジノ解禁はパチンコにとどめを刺すか。海外メディアも注目している。

【世界が日本のカジノに商機を見出す】
 『ジャパン・ゲーミング・コングレス』の開催を伝えたブルームバーグは、「カジノ推進派は、世界の注目が日本に集まる東京五輪までに開業し、観光の目玉にしようとしている」と報じる。

 日本のカジノ市場は年間4兆円に達するという試算もあり、海外の運営会社は今からこぞって1兆円規模の投資を表明しているという。たとえば、世界最大のカジノ運営会社『ラスベガス・サンズ』は日本事務所を開設して1兆円を投資する準備を進めており、香港の『メルコ・クラウン・エンターテイメント』は、日本企業と合弁会社を設立して上場する戦略を立てている。

 しかし、肝心のカジノ解禁法案の審議入りは遅れている。当初目指していた4月下旬の審議入りは見送られ、推進派議員らは今、5月下旬の衆院審議入りに向けて働きかけているという。超党派議員団の会長を務める自民党の細田博之幹事長代行は、東京五輪前の開業へのタイムリミットとされる今期通常国会での成立を目指すとしている。

【パチンコにも「賭博税」?】
 一方、ロイターは、カジノ合法化に向けた動きが、パチンコへの新たな課税や法整備を求める議論に火をつけたと報じている。カジノが合法化されれば、パチンコだけが“グレーゾーン”にとどまるわけにはいかない。パチンコも明確に合法化しなければ存続が難しくなるという考え方だ。そうなれば当然、パチンコ以外の世界の合法ギャンブルに課せられている「賭博税」も支払わなければならなくなる。

 また、そうした「パチンコ法」を制定して換金システムを明確化し、店内で正式に換金を行うべきだという声も業界の一部で強まっているという。ただし、業界内の有力なロビー団体は、国が定めた枠組みの中で合法化したうえで、現状のシステムを維持したい考えだという。

 ロイターは、これらのパチンコ「合法化」による税収は「入手した提案書によれば年間20億ドル程度になる」と見積もっている。

【パチンコの法整備も2020年五輪前夜か?】
 業界再編の動きの一方で、業界大手は「脱パチンコ」に動いている。ホール運営会社の『マルハン』『ダイナム』やパチンコ台メーカー『セガサミー』は、カジノ参入に向けて海外の運営会社との提携を進めたり、運営ノウハウを得るために韓国で試験的にカジノの建設を始めたりしている。また、不動産業への参入を目論み、「パチンコ以外からの収益を10%から20-30%に拡大したい」と公言する業者も出てきた。

 しかし、小規模なホールには業種転換をする体力はない。自民党の野田聖子議員は、カジノ推進派でパチンコの法整備の議論にも加わっているが、「小規模なホールの経営者は、特に多額の税金を支払う事態を非常に恐れている。そのため、慎重に検討しているところだ」などとロイターに明かした。

 また、岩屋毅議員(カジノ推進派・自民党)は、「パチンコ関連の法律を変える動きが実際にあるとすれば、カジノの運営が実際に始まった後になるだろう」と見ている。東京オリンピックが開かれる2020年ごろに、カジノもパチンコも大きな分岐点を迎えることになりそうだ。

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Text by NewSphere 編集部